第6話 街に入る
今日も調子よく飛んでいると、とうとう北と南の中間、大陸のくびれと呼ばれる場所に出る。城出して三日、結構のんびりした空の旅だ。
くびれ地方では街に寄る予定。そろそろ、亜空間収納内にあるドレスだけでも換金しないとね。
くびれには三つの国があるけれど、私が行くのは一番西にあるピケリーク。中でも王都に次ぐ大きな街である商業都市オパフだ。
街の手前の林で下りて、そこから何食わぬ顔で徒歩で街に入る。
身につけてるマントにはフードがついていて、これをかぶると認識阻害がかかるようになっている。黒髪は目立つっていうからね。
ここは以前にも立ち寄った事があるけれど、あの時よりも人が多い。多分、邪神の再封印が終わって脅威が去ったから、商業活動がさらに活発になってるんじゃないかな。
さて、古着を売るならどこに行けばいいんだろう? 悩んだ末に、街の広場で開かれている市場へ行った。
そこで果物を売っている店のおばちゃんに、店先のオレンジに似た果物を一かご買いながら聞いてみる。
「ここいらで古着を売るなら、どこに行けばいいかな?」
「古着かい? だったらそこの角を曲がったところにあるマーシルの店に行っちゃどうだい?」
「マーシルの店ね……ありがとう」
「どういたしまして。毎度あり!」
おばちゃんに教えられた通り、広場を抜けた先にある角を曲がり、マーシルの店という看板が出ている店を探す。あった。
店に入ると、すぐにさっきのおばちゃんと同じ年くらいの人が出てくる。
「いらっしゃい。何をお探しで?」
「いえ、実は古着を売りたくて」
「ああ、買い取りだね。じゃあ、こっちにどうぞ」
カウンターに案内されて、そこに出すように指示される。亜空間収納から大量のドレスを出したら、おばちゃんが目を回していた。
「ちょ、ちょっとお待ちよ! こんなにたくさんの上等な服、うちじゃ買い取れやしない」
「ええ?」
「お嬢さん、悪い事言わないから、これは大通りの店に持ってお行き。そうだねえ……」
そう言うと、おばさんは奥に引っ込んで、すぐにメモを持って戻ってくる。
「広場を抜けて大通りに出たら、時計台の方に向かって行くと右側にジネンって名前の店があるから、そこに行きな。そこなら、この大量のドレスも買い取ってくれるよ」
「わざわざありがとうございます」
「いいんだよ。気をつけて」
自分の得にはならないのに、いい人だ。店を出て、言われたように広場を抜けて大通りに出る。時計台は……あった、あっちだな。
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