ラスボスメーカー 第15話
「ありがとね。」
パンケーキ屋から名駅まで戻る道すがら植村が言った。
「ん?なにが?」
「え、なにがって言われるとなにがって感じだけど・・・、いろいろ、かな。」
「なんだよそれ。」
信号は赤になっている。
前の方には杉本と久本たちが騒いでいる。やっぱりあの2人は息が合いそうだ。
「うーん、なんだろな・・・。プログラム書く人ってさ、私の中では水原くんみたいな人のイメージなのね。だから勝手にそういうイメージがあって、それで今日のことがあったでしょ。さっき話したの。そしたらさ、それが全然違うんだってわかったんだ。ああ、水原くんすごいんだな、って思って。」
「いや、俺なんて別にすごくないよ。俺よりすごいやつなんて世の中にもっといるしさ。」
「そりゃそうなんだけどね、そうなんだけどさ・・・。私たぶんちょっとショックだったんだと思うんだ。」
「ショック?」
俺は植村に聞き返した。
「うん、たぶんね・・・。私ね、プログラマーの人って水原くんとか杉本くんとかそれに田上くんみたいな人ばっかなんだろうって思ってたのにさ、ああ、ってなってた。こんな人もいるんだって。」
「はは。そういうことか。まあ、俺も別にまだよくわかってないけどさ、プログラマーってそんなに特別な仕事なんかじゃないと思うよ。」
「え、特別でしょ!だって私からしたら魔法みたいだよ。意味わかんない英語がずーっと書いてあってそれとずっとにらめっこして、それでスマホでうごくもの作っちゃうでしょ。ほんとすごいよ。」
そんなふうに思ってたのか。たしかにそう見えるかもしれない。
「まあそれはそう見えるのかもな。でもそれは俺からしても一緒だよ。植村がドラゴンとか書いてるだろ?あれ見てるとほんとすげーな、ていつも思うんだ、尊敬する。俺には絶対できない。」
「え、うそ。ちょっと照れる。あはは。」
嬉しそうな植村。本当に照れているようだった。
「だからさ、特別なんかじゃないんだ。植村がいないとできないし、杉本がいないとできない。それに俺たちだけだと作れるもににも限界はある。だから田上に久本さんに加藤さん、みんなと一緒にやるようにしてきただろ?」
「そうだね。」
「俺はあんまり関係ないと思うんだ。単純に俺はプログラムを書くのが得意なだけ、植村は絵を描くのが得意なだけ。それだけだと思うんだ。それでさ、みんなで集まって一緒に知恵出し合って、ゲームの話しして、たまには言い合いもしてさ、そういうの繰り返してかないとたぶん作れないんだよ、ゲームって。ま、まだ俺もよくわかんないけどさ。」
植村が俺の方を見ていた。
「なに?」
「ううん。ちょっと男前だなー、て思ってただけ。あ、杉本くんたち行っちゃうよ。ほら。」
植村が俺の手を引いた。
信号は青に変わっていた。
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