ラスボスメーカー 第14話
「それで、どうしたんだよ。」
俺はすでにパンケーキを食べにみんなで来た、という雰囲気になっている中、本題に戻した。
「え?」
「え?じゃなくて、なんかあったんじゃないのか?メールのこと。」
植村たち女性陣はさっきからパンケーキに夢中だ。山盛りの生クリームだかホイップクリームが盛られた皿がくるとスマホで写真を何枚も撮りワーキャー騒いで、ようやく少し落ち着いてきたところだった。
「そうだよ、それそれ、なんかあったの?彩ちゃん。」
斜め向いに座っている杉本がパンケーキを頬張りながら言った。杉本もさっきまで女性陣と一緒にワーキャー騒いでいたばかり。
「あ、そうそう、それそれ。もー聞いてよ、ほんと腹立ってさ、ねー。」
植村は言いながら久本さんの方を見た。
「うん、まあ、そうだね、あれはちょっとないかなー。」
久本恵子。さっきの騒ぎの様子を見ている限り、あれが本来の姿なのかな、と俺は思っていた。3人の中でもひときわ豪快に騒ぎ突き抜けて明るい。この人ジェットコースターにでも乗ってるの?というくらいのテンションだった。俺の中では植村のテンションの高さも驚きだったが、久本さんの方も相当だった。
「うん、そうだね。」
加藤香。2人と違ってかわいくおとなしくパンケーキにもリアクションをしていた。地味といったらあれだが、清楚な雰囲気だった。加藤さんと久本さんは対照的だが、仲は良いのだろうか。女同士はぱっと見ではわからないからそれは置いとこう、と俺は考えるのをやめた。
「あのね、ラスボスメーカーの話さ、恵子と香ちゃんにはあのあとすぐしたんだ。それで2人はすぐ手伝うよ、て言ってくれてね。で、どうやってやってこうね、って学校でも3人でいろいろ相談してたの。そしたらさ、どっから聞いてきたのか知らないけど私たちがゲーム作ろうとしてるの聞きつけたやつがいてさ、それで”手伝ってやろうか?”て言ってくるんだよね。」
「ふーん・・・。で?」
「うん、でね、別に手伝ってくれるのは嬉しいじゃん?だから私ね、お願いしたんだ。でね、ラスボスメーカーのことももちろん話したし、ランサーのこととかもね、話したんだ。そしたらさ、”こんなの俺すぐつくれるよ、そいつら大丈夫?”て笑われたんだ。もうそれで私ほんと腹立ってさ、ブチ切れちゃった。」
「ほんとひどいよね、あいつら。」
植村がブチ切れる、というのも珍しい。
「植村さん、それ、作れるよってことはプログラマーの子なんだよね?」
「ん?あ、そうそう、その子たちはね、ゲームのプログラミング勉強してる子達なんだ。うちの学校ね、デザインも勉強できるんだけど、ゲームのプログラミングを勉強できる学科もあるんだ。」
「へーなるほどね。まあ、よくある話だと思うけどね。わはは。」
「よくある話なの?腹立たない?もうほんと思い出しただけでまた腹立ってきた。」
「まあまあ、落ち着きなよ彩ちゃん。俺も田上ちゃんの言うようによくある話かな、って思うよ。うちのとこもさ、ほら、プログラミングとか勉強するところじゃん?だからさ、似たようなことよくあるんだよね、ちょっとできると自慢しちゃうやつとかいてさ。ま、それと同じかな、って感じだね。ほら、水原ちゃん見てよ、さっきから全然聞いてないでしょ。」
杉本が俺の方を見て言った。そして植村も俺の方を向いた。俺は生クリームのないプレーンのパンケーキを食べていたところ。意外にうまいな、なんて思いながら。
「あ、もう、水原くん、聞いてる?ねえねえ、私たちバカにされたんだよ、頭来ないの?もう。」
怒りの矛先が俺の方に向きかけている。
「いや、まあそうなんだけどさ。よくあるといえばよくあるんだよ、こういうのって・・・。でもさ、これはプログラマーの世界の話なのか一般的になのかはよくわからないけど、そういうこと言わないやつの方がやっぱできるプログラマーだったりするんだ。ほら、田上とかさ、そうだろ?」
植村が田上の方を見た。
「田上くんは・・・、だってもともと優しいじゃん、だから違うよ。でも・・・まあそうなのかもしれないけどさ、でも・・・」
「いいよ、言わしとけば。ゲームってさ、一人じゃ作れないんだよ。だろ?だからさ、頑張ってるやつに対してそういう風にいうやつには面白いゲームは絶対作れないって。」
「うん・・・、まあ、そうだね・・・。みんながそういうならいっか。はあ、なんか怒って損したな、疲れちゃった。」
俯く植村。
ただ、俺はそうなるほど植村が一緒に作ってきたゲームに対して愛情を持っていることを知って嬉しかった。
「ああ。それで?久本さんと加藤さんが手伝ってくれることになったんだろ?進捗あった?」
「あ、そうそう!」
突然また元気になる植村。忙しいやつだ。
「イラストとかUIはね、私と香ちゃんで分担してやるから早くできそう、それでね、今まで杉本くんが作ってたちょっとした演出とかそういうのは恵子が手伝える思うんだ。だからね、こっちもパワーアップしたかな。」
「そういうこと?」
杉本が食いつく。
「うん、あの、ちょっとした演出とかFlashで作ってG-engineに取り込めるって聞いたから、たぶん手伝えると思う。」
久本が杉本に向かって言った。
「おお!それいい!いいねそれ!うわーめっちゃ楽しみ!」
「うん、私も。」
久本と杉本はなんだかよく似ている、そうふと思った。
そのあとラスボスメーカーの話、学校の話をひとしきりして俺たちは解散した。
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