ラスボスメーカー 第10話
「田上くんって鏡餅みたいだねー。」
「植村さんいきなりひどいなーもう。わはは。」
田上の言う通りだ、初対面でいきなり鏡餅なんて言う植村がひどい、思ってることそのまま言い過ぎだ。田上が温厚でなかったら張り倒されている。
「でもよかったね、サーバのことけっこう悩んでたんだもんね。田上くんよろしく!」
本当にその通りだ。あれから時間があれば3人で話をしているが田上の知識の多さには驚かされることが多かった。特にサーバ関連の話。少なくとも俺と杉本よりは圧倒的に知識があったし、なにかわからなければ田上の父親がSEとからしくアドバイスしてもらえるようだった。心強い。
「それにしてもでっかいね、大学。うちの学校が豆粒みたい。」
食堂を見回しながら植村が言った。
「彩ちゃんいつでも来たらいいよ、別に学校違っても入れるんだしさ。」
「嫌だよ、遠いし、そっちがきてよ、帰り道でしょ。今日はせっかくだから来ただけ。」
植村が通う専門学校は名古屋の中心、栄のど真ん中にあるが、俺たちの通う大学はそこから少し離れた場所にあった。
「そうそう、そんな話じゃなくてね、じゃーん、ボス描いてきましたよっと。」
植村は自分のスマートフォンをテーブルの上に置いた。その画面にはドラゴンが描かれていた。
「おお、植村さんすごいね。」
「おお、いい感じじゃん。でも、あれ、ドット絵にするんじゃなかったっけ?」
「あ、そうそう、そうなんだけどね、一旦一回り大きいサイズで描いてるんだ、それでそのあとで縮小して、ていう感じでドット絵にしてくの。もちろんドットをひとつずつ書いていく方法もあるみたいなんだけど私は普通に書いてから縮小する方にしたんだ。」
植村の描いたドラゴンは大きな翼を広げ歯をむき出しにしていた。その様子から威嚇をしているようにも見え、ボスという印象がありつつもコミカルな、というか可愛らしさもあった。
「水原くん、どう?」
「いいと思うよ、ベースはこれで大丈夫だと思う。ここから色が変わったりするんだよな?」
「そうそう、まだ色替えとかはしてないんだけど、皮膚の色変えるだけとかならすぐだからさ、またやったら連絡するよ。はじめの色は赤でいいかな?他の色でもいいとは思うんだけど。」
「うーん、赤か・・・、緑でもありかな。でも、まあ、どっちでもいっか、どうせ色変えれるんだしさ。」
「そうだな、俺も赤でいいと思うよ。」
「オッケー、じゃあ赤ね。そうそう、あとこれさ、どういう感じで画像渡せばいいかよくわかんないからまた教えてね。」
植村の言っているのはドラゴンの色替えをするためにどう画像を切り出して渡せばいいの、ということだ。ここをしっかりルール決めして統一しておかないと肝心のドラゴンの色替えができない。
「そうだった、そうだった。それさ、結局どうする?これ例えばさ、腕、頭、翼、足、とかを色替えできるとするじゃん。でも、そんなにする?むっちゃくちゃな配色のドラゴンになるだけじゃない?」
「わはは、たしかにそれはそうかもね。」
「え、でもそれが楽しいんじゃないの?着せ替えなんだからさ、もちろんそういうのもあると思うんだけど、もしかしたらすごいうまくできることだってあるわけでしょ、あれってけっこう楽しいよ、ほら、よくゲームの中でさファッションショーみたいなイベントあるじゃん、あれあれ、私とか逆にむちゃくちゃなコーディネートの人が気になるけどね。」
「ああ、そっか。うーん、じゃあいいのか、気にしすぎかな。」
「いいんじゃないか、そこは気にしなくて。俺は頭、翼、体、右腕、左腕、脚の6部位でいいんじゃないかと思ってる。」
「6個も!?」
杉本が驚いている。
「ねえねえ水原くん水原くん、なんで右腕と左腕なの?」
「右腕と左腕わけといたら、例えば何かを持ってるドラゴンを出した時、そいつの右腕だけを持ってこれるだろ?そうすると幅が広がると思うんだ。つまり、右腕に槍を持ったドラゴンのイラストの右腕だけを自分のドラゴンにセットして、左腕はまた別のドラゴンの腕にしておく、とか、な。」
「ああ!なるほど。たしかにそれはいいかも。じゃあそれでいこっか、頭、翼、体、右腕、左腕、脚の6部位ね。杉本くんもオッケー?」
「あ、はい。いやそれより彩ちゃんはこれ大丈夫なの?部位が増えると大変とかじゃない?」
たしかに、部位が増えると植村の作業が増える気もする。
「あ、それね。それこの間お母さんに相談したらね、バッチ作れば大丈夫だって教えてくれた。バッチ作るとその辺の作業を自動化できるんだってさ私はうまくできないけどね。お母さんにちょっと教えてもらうから大丈夫だよ。」
「そっか、ならよかった。いや俺らは田上もこれから一緒にやるからさ人数増えたんだけど彩ちゃん一人じゃん?大丈夫かなーてちょっと心配だったんだよね。」
今のところデザイン関連はすべて植村に任せっきりだ。さっきのバッチの話ではないがそういった自動化をして作業を効率化するにしても追いつかないくらいの作業ボリュームがある、はず(実のところデザイン関連の制作物の物量を正確には把握しきれていない。)。
「うーん、そう、そうなんだよね、私は別に好きでやってるからいいんだけど、ただ全部仕上がるまでにやっぱり時間かかっちゃうんだよねー。」
「植村さんの学校の友達に手伝ってもらえばいいじゃん、絵かける子いっぱいいるんでしょ?」
「そうだよ、そうすりゃいいじゃん、なんで今まで気づかなかったんだ。彩ちゃんそうしなよ。」
杉本が植村の方を向いていった。
「うーん・・・。まあそうだよね、とりあえず何人かには相談してみるよ。」
と言いつつも植村はあまり気が乗らない、という感じに見えた。
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