ラスボスメーカー 第9話

「水原くん、だっけ?」

その日最後の講義が終わり杉本と帰る準備をしていたときだった。まるまる太った男が話しかけてきた。

「ああ、そうだけど。」

同じ学科のやつ、とだけは知っていた。

「俺は田上ていうんだけど、あ、同じ学科で、それは知ってるか。」

「ああ、なんとなく。」

なんだか少し気まづい感じだが、大学で同じ学科というだけでは何かしらの機会でもなければ話すこともないからこんなものだった。高校までとは違う。

「他のやつからさ、水原くんはゲーム作ってるって聞いただんだけど、ほんと?」

「あ、ごめん、たぶんそれ俺が他のやつにプログラミングの講義中に教えたからかな、それで知ってるんだと思う。」

杉本が横で教えてくれた。

「何個か作ったよ、今も作ってるけど。」

「そうなんだ・・・。あのさ、なんかサークルとか入ってるの?」

「サークル?」

「そう、もしそういうサークルあるなら教えて欲しいんだ、僕もゲーム作るの興味あってさ。」

そういうことか。

「いや、サークルは入ってないよ。俺は高校の友達とゲーム作ってるんだ。で、こいつは同じ高校の杉本、今まで作ってきたゲームはこいつともう一人デザイン担当している子と一緒に作ってきた。だからサークルとかじゃないんだ。」

「そっか、そうなんだ。残念だな、そういうサークルあるんだって思ったんだけど・・・。ごめん帰りがけに、ありがとう。」

「ちょちょ、田上くん。」

杉本が呼び止めた。

「プログラムけっこうできる?」

「え?プログラム?まあできると思うよ、今の講義とかぶっちゃけたるいって感じるくらいにはね。あ、でもたぶん2人よりは僕はプログラミングはまだできないかもしれないけど。僕はサーバとかの方が得意なんだ。父親がSEでさ、いろいろ教えてもらってたからね。」

杉本が俺の方を見た。たぶん同じことを考えていた。

「サーバサイドのプログラミングできる?PHPとかさ。PHPじゃなくてもいいんだけど、その辺のことも詳しい?」

俺は田上に質問した。

「PHP?大丈夫だと思うよ、あれ、G-engineとか使ってゲーム作ってる、て聞いたんだけど違うの?」

「いや、そうなんだけどさ、ちょっとサーバの方もいま欲しくてちょっと困ってたんだ、俺あんまり詳しくなくて。」

「そういうことか、うん、大丈夫だと思うよ、サーバ作ってAPIとか欲しい、ていうことだよね。」

話が早い、やっぱりけっこうできそうだ。

「水原ちゃん、手伝ってもらおうよ。」

俺は田上を見ながら何度か頷いた。

「田上くん、もしよかったら、でいいんだけどさ、手伝ってくれない?いま作ってるゲームでサーバ側のことちょっと困ってて手伝って欲しいんだ、設計はだいたいしたんだけど、いろいろ相談させてほしい。」

「いいの?」

「いいよいいよ、むしろ手伝ってよ。」

「え、じゃあ、よろしく、ていう感じでいいの?」

「ああ。じゃあまた今度さ、詳しいこと話すよ、俺たちだいたい毎日学校でもゲーム作ってるからさ、またそのときに。」

帰りの電車で杉本が「田上って鏡餅みたいだよな。」と言っていた。そりゃそうだが言い過ぎだろ、と思った。

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