ラスボスメーカー 第6話

「水原ちゃん、今回はちょっと厳しいかもね。さすがに今月中にはできないかなー。」

杉本がPC画面を覗いたまま言った。

俺も同じことを思っていた。

「そうだな・・・。」

原因もわかっていた。

正直今回のラスボスメーカーについては今までで一番規模が大きなゲームとなっていた。欲張ったわけではない。これでもだいぶ仕様を削って選択してきたのだが、それでも作業ボリュームは今までの比ではない。植村は今日は家で作業をしている。植村の制作するボリュームも相当な数になっている。

よく聞くというのはこういうことなんだろう。

メインゲームについてはリズムゲームの要素を取り入れるという話をして大筋は決まったもののまだまだ不明確な部分がある。このあたりは実装をはじめてしまい、探り探りプレイをしながら探っていくのいうのもありだが、それにしても現時点で他の作業に追われ着手できていない、というのはよくない。メインのゲームを作り始めていないのだから、なにもできていないのと同じかもしれない。

「杉本、作業の整理しようか。」

「整理?」

「ああ、今回のやつは正直俺もまだ時間がかかるとは思ってる。できないとは思ってないけどな。でも、いつ、ていうのはまだはっきりわからない。あと1ヶ月から2ヶ月くらいだろうとは思うけど、そのころはみんな大学始まってるだろ?そうすると作業のペースは落ちるだろうし・・・。でもラスボスメーカーは完成させたいんだ。」

「それでまずは作業のリストアップだけしよう、てこと?」

「そうだな。ほんとはスケジュールまで引きたいところだけどそれは大学の授業の様子とかがわかってからだろう、しばらくすればどのくらい時間をとれるかわかるはずだから。」

俺と杉本は4月から同じ大学に通うから問題はない、問題はないというかコミュニケーションもとりやすいし、お互いの忙しさとかもわかりやすいだろう。問題は植村でどの程度の忙しさなのかわからなかった。4月からもうまく連絡をとりながらラスボスメーカーを制作していくことができるのか懸念があった。

「彩ちゃんにも聞こうか。電話してみようよ。」

俺は植村の携帯に連絡をした。

「あ、水原くん?どうしたの?」

すぐに出た。携帯で音楽でも聞きながら制作をしていたのだろう。

「ラスボスメーカーのことなんだけどさ、ちょっとさすがに間に合わない気がしててさ、それで・・・」

「あはは、そうだね、私もそう思ってたところ、奇偶だね。」

電話の向こうで大きな声で笑う植村。よくない状況の割には明るい。

「そう、それでさ、でもやっぱりこれ作りたいんだよね俺は。そうすると4月からも、大学入ってからも一緒に作業することになると思うんだけどさ、大丈夫かな、て思って。」

「え、なに言ってるの?私はじめからそのつもりだったけど。」

「え。」

「え?あれ、杉本くんはあきらめた感じ?」

「いや。」

「じゃあ大丈夫だね、でも4月になるとどれくらいのペースで制作できるかわかんないんだよね、さすがにペースは落ちると思うからまたお話しするね。」

「ああ。」

「話しってそれだけ?」

「ああ、それだけ。ありがとう。」

「はいはーい。じゃあまたね、ボスのイラストできたらまた連絡するね。」

電話が切れた。植村のペースで話が進んでしまった。

「彩ちゃんなんだって?」

「大丈夫だってさ。」

「そっかそっか、あれ?作業の整理は?」

完全に忘れていた。

「なになに、どうしたの?水原ちゃんらしくないね。ま、いっかとりあえず4月からも一緒に作ってくんだよね、じゃあいっか、またそのうちいやでも話すでしょ。」

そういうことだ。俺も同感。

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