Jewels 第19話

になってから何日経っただろう。

何日経ったか数えてはいないが、あまりその状況に対して焦ることはなくなった。明らかに植村のおかげだった。植村に話すまではその状況を受け止められず、あれやらなきゃ、これやらなきゃ、でもしんどい、面倒だ、・・・つまらない、という悪循環でゲームを作ることを嫌いになりそうだった。植村と話してからそういうこともあるだろう、とそういう自分を受け入れることができるようになっていた。

そうしてしばらく俺は普通の高校2年の生活をしている。

朝起きて、ご飯を食べて学校に行く。授業を受けて昼飯を食って、また授業。そして家に帰る。帰って漫画を読んでやろうと思ってやれてなかったゲームをして寝る。それのループ。気づいたかもしれないが、不思議なのはゲームを作るのはちょっと疲れたから離れているとはいえ、ゲームは平気でやってるところ。これは自分でも不思議で俺ってやっぱり作る側じゃなくて単にゲームやってるのが好きなだけなんじゃないか、と思ったりもしていた。そういえばサッカー部の友人で中学でけっこう活躍してたが高校に入ってしばらくしてから試合中にした怪我のせいでサッカーから離れ、

「俺サッカーやるより観てる方が好きみたいなんだわ。だからサッカーはしばらくいいや。」

なんて言ってたやつがいた。そいつはその通りにその後サッカー部を辞め、自宅でもっぱらサッカー観戦を一人で楽しむようになっていた。

俺のこれは同じことなんだろうか。

俺はゲームを作りたいわけではなくてゲームが好きなだけ。

ゲームをしていたいだけ。

そんなことをぐるぐると考えていた。

そういや担任にも言われたな。

「水原くん、君は情報系の学科志望なんだろ?」

「情報系?」

「そう、プログラムを書くのが好きみたいだしその方が向いてると思うんだ。」

「いや、確かにプログラムは書けますけど俺よりできる人なんてもっといますよ。」

「そうか・・・。」

「はい。」

「まあ、僕にはそういう世界のことはよくわからないけれど僕はそちらの方が君に向いているように思うけどな。」

「そうですか。」

「時間はあるようでないから一度ゆっくり考えてみなさい。将来どうなりたいのか、ね。」

「はい・・・。」

考えすぎな気もするがそこにつながっていく気がする。

俺はこの先もゲームを作っていくのか、作っていていいのか、飽きることなく作り続けられるのか。いろいろ考えてしまっていた。

「マスター!」

少し前から始めたオープンワールドの洋ゲー風国産アクションRPGのしもべが俺の操作するキャラを呼ぶ。こいつはただのAIのプログラムなわけだ。といってもこのAIプログラムを作るのは相当な苦労だ。今の俺には想像もつかない。どうつくるのか。

それにこの3Dのオープンワールドのゲームなんてどうやったらつくれるのか。どうやったら、ということではないな。これつくれるんだよ、という方が正しい。これだけ広大なフィールドとモンスターをつくるのは永遠に続くかのように思える作業量だろう。

「すげーなほんと・・・。」

一人でゲームをしながらつぶやいていた。

このゲームを作ったディレクター、エンジニア、デザイナー、・・・いろいろいるだろうが本当にすげーな。そう感じた。俺はこの人たちに本当に近づけるんだろうか。いつまでやっても追いつけないんじゃないか、そんな不安さえ感じた。

でも一方でこの人たちとゲームを作れたらどれだけ楽しいだろう、とも思っていた。

毎日好きなゲームの話をして、次に新しくつくる機能の話をして、・・・考えただけれもワクワクしてくる。下っ端でもなんでもいいからそこの輪の中に入りたい、そう感じた。

「マスター!」

こいつ馬鹿なのか、このクソAIめ、ちゃんと攻撃しろよ。俺だったらもっといいAI作ってやる。そう思いながら俺はゲームをしていた。

気づくと今日も深夜1時すぎまでゲームをしていた。

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