Jewels 第17話
文化祭が終わってはじめての全校朝礼。
教師陣も含め軽く1000名を超える人間が集まる不定期に行われる集会だ。体育館の中は生徒でごったがえしていた。一応、体育館前方のステージを先頭に南側から1年1組、1年2組・・・3年10組と男女一列に並んでいるはずだが、およそそんな風には感じられないほど無秩序な列ができあがっていた。うちの高校は基本的に生徒の自由を尊重する、という校風があった。だからなのかなんなのかわからないが、そういう無秩序な状態を教師陣も厳しくは指摘しない。それが結果的に自由をはきちがえる生徒を生み出しているのかもしれないが。
ちなみに。
俺はこの雑然とした全校集会が嫌いではない。
理由はないがなんとなくこの雑然とした雰囲気、状況の居心地が悪くないから、というところだろう。とはいえ毎日あるとうんざりする。不定期なことが前提で嫌いではない、ということか。
ともあれ。うちの高校らしい雑然とした全校集会がはじまっていた。
誰も耳を傾けない校長の話が終わり、とりあえずの生徒会長が話を始めていた。
「・・・2年3組のJewelsです!」
なぜ突然Jewelsとうちのクラスの名前が発表されているのか。まわりの同じクラスのやつらは歓声をあげていた。
「それでは代表者の方々、前の方までお願いします。」
一段と雑然としてきた体育館で生徒会長の声はマイクを通してだったがかすかにしか聞こえてこなかった。
「水原、まえまえ。前行ってこいよ!」
「え?」
「なにしてんだよ、早く!俺たち優勝したんだよ!」
背中を押されながら人混みをかき分けかき分け前にでていき、ステージに登った。
「みずはらー!」
「ゆうとー!」
うちのクラスのやつらだ。ステージの上からでもどこにいるかわかる。そこだけやたらと盛り上がっている。
やばい。
すげー恥ずかしい。
ステージに立ってることも、あいつらに名前を呼ばれていることも。
「ゆうとー!」
いつも名前で呼ばないだろお前ら。
文化祭の表彰式は続いていた。
誰がどうやってなにを基準に評価してくれているのか知らないが(もしかしたら説明があったかもしれないが覚えてはいなかった)、優勝したようだった。生徒会長から「おめでとうございます。」と、賞状をもらった。「ひとことお願いします。」とマイクを渡された。
「み・ず・は・ら!」
「み・ず・は・ら!」
「み・ず・は・ら!」
うちのクラスは一段と盛り上がっていた。
こういうのは苦手だ。
「えーっと。」
俺は話し始めた。
「水原ちゃーん!」
杉本だった。よく通る声だ。
「ほんとはこういうの苦手なんですが・・・。こういうのというのはみんなを引っ張ってなにかをすること、という意味なんですが。今回こうやって優勝することまでできたのは、うちのクラスのみんなの協力があってだ、と思っています。」
なにを話そうかまとまらない。ウィットに富んだことでも言えれば、と内心思っていたがとっさのことで思いつかない。諦めて普通に、無難に終わらせるのがいい。そう思った。すべるよりましだから。
「そしてJewelsに参加してくれた方、本当にありがとうございます。いろいろごたごたしたんですが、楽しんでもらえていたら嬉しいです。僕らも楽しませてもらいました。本当にありがとうございます。最後に、Jewelsについてなんですが、Jewelsは一般の人が今後プレイできるように公開をしていきます。」
言ったあと、体育館がざわついているのがわかった。普通の高校生がすることではないからピンとこないのだろう。あいつ何言ってんだ、大方そういう感じに思われている気がする。
「より多くの人にJewelsというゲームを楽しんでもらえるよう準備をしていきますので機会があればまた遊んでください。以上です。」
マイクを生徒会長に返すと簡単に締めの挨拶が生徒会長からあり、全校集会は終わった。
教室に戻るとクラスのやつらから質問攻めだった。
「公開するってどういうこと?」
「手伝うよ!」
「もしかして儲かるの、それ。」
などなど。
「ごめん、まだ具体的にはなにも決まってないんだ。これから考える。」
俺は質問にそう答えていた。なにも、ということはないのだが、もう少し、もう一度じっくり考える時間をとりたかった。公開するのはするとしても考えるべきポイントはいくつもあったから。
「文化祭終わったのにまだやることいっぱいありそうだね。」
「ほんとほんと、もうなんだよ公開するって。」
植村と杉本だった。文句を言っているようだが顔はそうでもない。
「公開しよう、てお前のアイデアだろ。なに言ってんだよ。」
「え、そうだっけ?」
あのとき酔っ払ってたんだな、やっぱり。
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