Jewels 第16話

「1位は・・・。"チームコメダ"です!おめでとうございます!」

2日目は2年生の男女混合8名チームが優勝した。

2日目は比較的人数が多いチームが上位入賞をしていた。このあたりは1日目のゲーム内容をもとに対策を立ててきた、ということの裏返しのように感じられた。

つまり。Jewelsが攻略されはじめている、ということだ。

もっというと、宝箱の設置してある場所も昨日の傾向から2日間続けて参加している人、または1日目に参加した生徒からゲーム内容についてシェアしてもらった生徒たちは目星をつけているようだった。(実際、チームコメダは前日に引き続き参加していた生徒が数名所属しているチームだった。)13時のゲーム開始直後からそういう様子は見て取れた。

まあ、仕方ないだろう、というのが正直なところ。

Jewelsがもし1週間毎日開催するゲームだったらこの点については改善をしなければいけない。ゲームとして不公平感があるから。それも運営の仕事だろう。ただ今回のJewelsは2日間、という限定つきのゲームイベントだ。目をつむってもらってもいいだろう、そう俺は考えていた。

そして16時過ぎ。

無事にJewelsは終了した。


「おつかれー!」

カン、とアルミ缶のぶつかる軽い音がした。軽く打ち上げをしよう、ということでいつものメンバーでいつもの俺の部屋で打ち上げをしていた。俺と杉本は缶ビール、植村はハイボールだった。

「てか彩ちゃん、ハイボールなんだ。」

俺も思っていた。てっきりもう少しかわいい酎ハイとかかと。

「酎ハイとかの方がかわいいのに、とか思ってるでしょ。」

思っていた。

「いいの、好きなんだから、ほっといて。あ、さきいかとってー。」

こいつは完全に飲める方だな。確実にそうだ。高校生のくせに家でもけっこう飲んでるんだろう。

「あ、家ではそんな飲まないよ、こういう時だけだからね。」

今日の植村は鋭い。

「いやーそれにしてもほんとよかったねー大成功じゃね?ね?」

「そうかもな。」

「いやいやほんと水原ちゃんさまさまだよ、ほんと。惚れたねー。」

杉本がすり寄ってきた。

「やめろよ、気持ち悪い。もう酔ってんのか?」

「あ、ねえ、もしかしたらさ、1位とれないかな?」

「あ、あるかもあるかも!」

「なんだよ1位って。」

なんの順位の話かついてけなかった。

「なにってあれだよあれ、文化祭の順位だよ。水原ちゃん知らないの?あれ、一応審査がされてて順位つくんだよ。」

それは知らなかった。審査とかされてるんだ、というか誰が審査してるんだいったい。

「誰が審査してんだよそんなの。」

「うーん、たしか生徒会だったかな。あと何人か先生とかも審査してるはず。」

「ふーん。」

「あ、これ絶対興味ねーて思ってる。」

「うん、興味ねーって思ってる。」

2人して俺の方をニヤニヤしながら見ていた。確かにそう思っていたがそれはそれで癪だった。

「水原くんさ、初めの頃はよくわかんないな、て思ってたんだけど最近はあれだね、逆。」

「逆ってなんだよ。」

「実は顔にでるタイプだからわかりやすい、てこと。」

大きなお世話だった。

「ああ、そうだ水原ちゃん、話変わるけどさ、あれどうするJewelsのアプリ。」

「どうするってなにが?」

「いや、だってせっかく作ったんだしさ、もったいないじゃん、だからさ公開しようよ。」

「公開?」

「そう公開公開、リリースだよ。リ、リ、ー、ス。」

杉本が気持ち悪い。

それはおいておいて。

公開することは全く考えていなかった。第一、Jewelsはリアルで人が集まってするゲームだったから公開するという発想はなかった。

「杉本、公開するっていってもランサーのときとは違うんだぞ。Jewelsはリアルでやるゲームだし。」

「わかってるよ、でも別にいいじゃん、説明書と一緒にJewels公開すればさ。Jewelsはこうやって遊ぶゲームでーす、てちゃんと書いとけばさ。」

「ああ・・・。たしかに、そうだな。」

「それいい!いいよ杉本くん、今日は冴えてるねー!」

「だろー!あはは。」

2人とも今日はいつも以上のテンションだ。まあそれも仕方ないからいいとしよう。それにしてもJewelsの公開か。杉本のいうようにちゃんと考えてみるとたしかにありな気がしてきた。世界観、ストーリーも込みでリリースすればそのまま使ってもらえるだろう。俺たちの同じように文化祭でもいいし、文化祭に限らずどこかのイベントで使ってもらってもいい。ビーコンの用意はいるがそれも実際はそんな大したことはない、しっかり説明を用意すれば問題にはならないはずだ。

「なあ杉本。」

「え、なに水原ちゃん。」

ちょっと酔っ払い出してるのか声がでかくなっている杉本だった。

「さっきの話さ、ちゃんと考えてみるよ。」

「え、なになに。」

「・・・」

「え、なになにどっちの話?」

「いや、なんでもない。」

だめだ、酔っ払っているみたいだった。また今度話そう、そう思った。

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