Jewels 第7話
翌日の放課後。
教室に文化祭の実行委員は集まった。全部で3名。
つまり。
俺と杉本と植村のいつもの3名。
他にも協力してくれそうな人はいたが、
「今日は部活が・・・。」
ということだった。こればっかりは仕方ない。
「こうなっちゃうよねーうちの学校っぽいていうか。でもみんな別に協力したくない、ていうわけじゃないし・・・。ま、うまいこと巻き込めるように準備しくしかないっしょ。」
杉本に賛成だった。今日はいつもの3名。でもだからといって他のクラスのメンバーが非協力的だ、なんて思ってはいない。
進学高だから、というのもあるのだろうか。
やはり根が真面目なやつが多い。彼らは彼らで今は所属している部で精一杯やっているわけだ。そんな彼らにさらに文化祭のこともやれ、というのは酷というもの。
「うん、そうだね。それでさ、どうしよっか。トレジャークルーズ、まだけっこう決めることあるね。」
「そうだな、正直まだまだ詳細な仕様を詰めないといけない。」
「そうなんだよね。でも・・・。」
「でも?」
「一番肝心なのはどんなご褒美を設定するかとどう競わせるか、な気がするな。もちろんアプリ作らなきゃ、だけどその辺は初めてっていうわけじゃないし。作り始めたら意外にすぐできるかなー、て思ってた。」
植村の指摘通りだった。
このトレジャークルーズのポイントはご褒美、つまり宝箱を見つけてきたプレイヤーへのインセンティブ、そしてプレイヤー同士をどう競わせるか、という点だと考えていた。
つまり。
なにが欲しくて宝箱を見つけるのか。
なぜこのゲームをするのか、だ。
そこの動機設定がポイントだった。もちろん単純に、「宝箱を探そう!」でもゲームとしては成立する。でもそれでは単に目新しさで人は集まっても参加してくれた人がゲームに熱中することは難しいだろう。宝箱を探す、というだけでなくゲームとしての面白さが欠けている、そんな印象を俺も持っていた。もうひとつ、なにかこのゲームを面白くするピースが欲しいわけだ。
「そうそう、それは俺も思ってたんだよね、このゲームは面白くなると思うんだけどもう一捻りしないと熱中しない、ていうか、そう、そういう感じのゲームになっちゃうと思うんだよなー。」
杉本も同じことを考えていたようだ。杉本は続ける。
「単純にさ、まず考えられるのは宝箱を見つけた人にはお菓子とか極端なこというと、金銭的な何かを景品としてあげちまう、ていうことになれば自然と必死になってやるよね。まあ、だけどさー文化祭ってわけだし、学校でやるんだからお菓子あたりが落とし所としては現実的だよなー。」
「そうだね、さすがにお金は、ね。」
「ああ。まあそうだな、褒章はお菓子にせざるを得ないな。」
「そうそう、まあお菓子が妥当ってなるよねー。じゃあそうするとさ、できる方法っていうと、例えば宝箱をいっぱい見つけた人にはその数に応じてお菓子の数が増えるとか質がよくなるとか、そんなとこかな。いや、でもな・・・。」
「それだとインセンティブとしては弱いな。一応インセンティブにはなるけどな。」
「やっぱそう思うよね。そうするとなんか別の方法がいるな・・・。だめだ、全然思いつかね・・・。なんかないかな。」
まずシンプルにプレイヤーを惹きつけるのにお菓子、というのは妥当だろう。(というより予算上、おそらくそれ以上の景品を用意するのは難しい。)ただ、もうひとつこのゲームに参加してくれる人を熱中させるなにかが必要だ。このままのゲームルールでいっても楽しんでくれるだろう。でも。せっかくだからもう一工夫したい。その方法がなにかあればいいんだが。
「あ、例えばこんなのどう。」
杉本が話し始めた。
「俺、最近このゲームやってんだ。これこれ、クリスタルリーグ。」
クリスタルリーグは昨年リリースされたスマートフォン向けのゲームだ。リリース後から徐々に人気が出始め、今ではテレビでCMを見かけることもある、人気のスマートフォン向けゲームだった。
「それでさ、このクリスタルリーグって一番面白いのがGVGなんだよね。これが面白くってさ、しょっちゅう入ってるギルドの人と口喧嘩するんだけどやめられなくってさー。」
GVGはGuild vs Guildの略称だ。プレイヤーの集団同士が戦闘をするゲームシステムのこと。クリスタルリーグが評判がいいのは様々理由があるだろうが、このGVGシステムがよくできていることが一番の要因、とよく言われている。相手ギルドとの戦闘時の駆け引きの楽しさ、適切なマッチングシステム、所属ギルドメンバーとの交流を深める機能。GVGはこういったシステム、機能がそれぞれ高いレベルで仕上がっていてはじめて面白くなる。クリスタルリーグはそれができていた。
「それで?クリスタルリーグがどうかしたの?」
植村がいった。話がクリスタルリーグの方に脱線していた。
「あ、ごめんごめん。だからさ、GVGにしちゃえばいいんじゃないかって思ったんだ。」
「ん?どういうこと?」
おそらく植村はGVGをやったことがないのだろう。さすがにこの説明だけではわからない。でも俺は杉本のその説明で杉本が何を考えているか理解できた。
「そうか。トレジャークルーズもチーム対抗のゲームにすればいいってことか。」
「そゆこと。さすが水原ちゃん。面白そうじゃない?」
「ああ。確かにそうすれば競争意識も働いて盛り上がる気がする。」
「ね、悪くないよね、GVG案。」
チーム対抗の宝探しゲーム。いろいろ決めることはありそうだが、しっかり仕様を決めれば面白くなりそうだと手応えを感じた。
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