Jewels 第4話
7月。
俺たちのクラスには6月に行った修学旅行のおかげで秩序が生まれ始めていた。修学旅行の詳しい話はまた機会があればすることにする。なんのことはない、ただの九州旅行だったから大して話すほどのことはない。クラスには意外に植村に好意を持っている男子が多いんだ、という新事実を知った以外はさして目新しいことはなかった。
修学旅行とは関係ないがせっかくなのでなぜ植村が男子に人気があるかせっかくだから話をしておこう。
植村彩。
植村彩は、ぶっ飛んでかわいい、綺麗だ、スタイルがいい、とかそういうことはない。もちろん不細工かと言われればそれは違う。が、綺麗か、と聞かれれば、そんなことはない、と俺は言うだろう。
堂々めぐりだ。
つまるところ。
植村の魅力はその飾らない見た目(透明感がある、とも言い換え可能だろう)とあっけらかんとした性格。
そして。オタクであること、だった。
最後が重要だ。
オタクであること。それはつまりオタクに寛容であることとニアリーイコールだ。
俺たちのクラスは理系クラスだった。この先は言わずもがな、ということになるだろうが、理系クラスであるがゆえに、オタクな生徒、オタク候補生は多かった。どこからがオタクでどこからがオタクでない、というような無駄な議論はこの際なしにしよう。
仮に、アニメ、ゲームが大好きだ!、というやつを生理的に受け付ける女子をグループA、受け付けない時女子をグループB、とする。
そうすると、だ。
うちの高校の女子の場合、グループBの女子の絶対数が多かった。もちろんこれは予想でしかない。だから、もしかしたらグループBと見せかけて実はグループAでした、なんていう女子もいるかもしれない。(ほんの一年前の植村がそうだったように。)それでもしかし、そこは問題ではなかった。
問題は俺たちがグループBの女子とも仲良くしたい一方で、オタクであることをやめることができないことだった。
そうすると。
そういう男子達から見ると植村は輝いて見える。植村が人気があったのはそういうことだった。整理していると大したことはない話。
以上、植村の話は終わり。
7月になった。
もうすぐ夏休み。待ちに待った夏休み。
でもその前に、いや前ではない、正確には夏休みがあけた9月。
夏休みが終わった9月の第1週。
9月の5日と6日の2日間。
文化祭があるのだ。
そして俺たちは文化祭について何をやるのか、誰がやるのか、もっと言うと、この文化祭を俺たちはどれくらい本気でやるのか、についてすべての授業が終わった後に開かれたホームルームで話し合いをしていた。
ほんとに白けたホームルームだった。
俺は早く帰りたいと思いながら席についていた。
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