Jewels 第3話

新しいクラスでの授業がはじまった。

2年生になったからといって新しく物理が科目として増えた以外に授業の難易度がかわる、とかそういうことはなかった。ただ、1年生のときと比べて先生からのプレッシャーは増したように感じた。「来年はいよいよ受験だぞ。」

「今からしっかり準備しとかないとな。」

という話が多い。

そんなこと言われてもな、というのが本音だ。自分ごとにはなかなかなれなかった。

一方、物理という科目には俺は興味津々だった。

とくに力学。

力学はゲームを作るときに必要な知識だった。

必須かと言われるとそうではないかもしれないが、G-engineではG-engine上の物体に重さ、反発係数、摩擦係数といった設定項目があった。これらは物理特性と呼ばれていた。力学の授業ではこういった係数がどういう意味があるのか、ある状態のときに物体がどういった動作をするのかについて学ぶことができた。力学の勉強をするたびに意味もわからずG-engine上で触っていたパラメータに対する理解が深まっていくのを感じた。同じことを杉本も言っていた。物理は楽しいと。植村は対照的に物理がわからなすぎてもうだめだ、と嘆いていた。反発係数とか全然わかんない、だそうだ。俺と杉本はなんでわからないのかわからない、という感じだったが、他でもない植村のためだ、ということでG-engineを使って植村に物理の(力学のという方が正しいかもしれない)お勉強会をすることにした。G-engineを使って高校の物理で習う程度の力学の物理シミュレーションは容易だった。とくに物体の落下運動や投射(任意の角度で投げる)運動あたりはすぐにG-engine上でシミュレーションできた。簡単なものをG-engine上でシミュレートし植村にそれを見せながら俺と杉本は力学の話をしていった。植村の地頭の良さもあっただろうが、意外にすんなり理解をしてもらえたようだった。

「こうやって実際にどう動くか動画とかで見せてもらえるとイメージつくからわかりやすいね。てかG-engineすごーい。」

とのこと。

そしてこの物理シミュレーションはクラスメイトにも大人気だった。この物理シミュレーションを作ってから俺は他のクラスのメンバーにも力学の授業をしていた。

「水原先生!」

といつの間にか呼ばれるようにまでなっていた。

すごいのは俺じゃなくてG-engineなんだけどな。

そしてあっという間に物理が得意な水原、という称号が俺のものになった。

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