ランサー 第12話
「あの。」
肩まで伸びたストレートの髪が綺麗な女子が俺と杉本が囲んでいた机の横に立っていた。
植村彩。
同じ学年の女子だ。俺は、多分話したことはないはず。
「ゲームやったよ、ランサーだっけ。ちょっとびっくりした、ほんとに自分たちでつくったの?」
彼女は少し控えめに、でもどこか興奮を抑えるような様子で話した。
「うん、そうだよ。俺と水原ちゃんでつくった。」
「ほんとなんだ・・・。」
植村彩は目を丸くしていた。そして続けて質問してきた。
「じゃあ、イラストとかどうしてたの?」
「イラスト?キャラとかそういうやつの話?」
「うん、キャラもそうだし武器とか背景とかいろいろ・・・。フリーのイラスト使ってたの?」
「そうそう、全部フリーの素材を使ってた。ストアに載せる画像とかは少しだけ自分たちで加工したけどねー。さすがに俺も水原ちゃんも絵は描けなくてさ。」
「へー、そうなんだ。」
植村彩は少し間をおいてから言った。
「あのさ・・・。もし、もしよかったら、なんだけど・・・。」
植村彩は自分のポケットからスマートフォンを取り出した。
「私、イラスト描いてるんだ。まだ練習中だけどお母さんがデザイナーでね、教えてもらいながらいろいろやってるんだ。」
植村彩はスマートフォンの中の写真フォルダに保存された自分が描いたキャラクター画像をいくつか見せてくれた。俺と杉本は思わず彼女のスマートフォンの画面を覗き込んでしまった。
すごい。
素直にそう思った。
ポケットモンスターにでてきそうなかわいいモンスターからディズニーの映画に出てきそうなキャラクター。どれもすぐに使えそうなクオリティのものばかり。
「すげー・・・。」
思わず俺と杉本は言った。
「それでね。もしよかったら、なんだけど・・・。私のイラスト使ってくれないかな、と思って。」
植村彩は俯き加減に恥ずかしそうに言った。
「ランサーをみてね、キャラクターを変えるだけでもっと面白くなるんじゃないかな、て思ったんだ。だから・・・。どうかな?」
「ちょ、まじで?いいの?ほんと助かるよ、それ。すげー困ってたんだ。な、水原ちゃん。」
俺は植村彩の顔を見て何度も頷いた。
「ああ。ほんとに助かる。むしろお願いしたい。」
このイラストがあれば、彼女がいれば、もっといいゲームが作れる、俺はそう感じていた。
「ほんとに?よかった。」
植村彩は嬉しそうに言った。どこかホッとしているようにも見えた。
「ねえ、彩ちゃん、もっとないの?もっといろいろ見たいんだけど。」
「え、イラストのこと?んー今日はちょっと持ってきてないんだ、さっき見せた分だけ。明日でいいならまた持ってくるよ。」
「ほんと?んじゃ、明日お願い!」
「いいよ、どんなのがいいかわかんないけど、とりあえずいろいろ持ってくるよ。」
「ありがとう、すげー助かる!」
50分間の昼休みの終わるベルが鳴った。
俺たちは連絡先を交換してその場は終わりにした。
植村彩。絵が描けるやつがうちの高校にいるなんて思わなかったな。
「水原ちゃん、なんか面白くなってきたねー。」
杉本はそう言っていたが、俺も同感だった。
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