ランサー 第10話

夏休みも終わり通常通り学校ははじまった。

まだ夏休み気分が抜けてないんだろう、クラス中にそういう空気があった。

ふわふわした感じの雰囲気。

おそらくそういうクラスの雰囲気にのまれたんだと思う。

杉本がランサーのことを話してしまったのだ。


俺たちは急に人気者になった。正確に言うと杉本は前からクラスの人気者だったから、俺が急に人気者になった、そういうことになるか。

「見せてよ、そのゲーム、やってみたい!」

「どうやってつくったの?」

「俺もつくってみたい!」

とかそういう話が多かった、と思う。

「ちょちょ、ちょっと待ってよ、見せる見せる、見せるからさー、一回落ち着こう。」

杉本は俺の方をちらちら見ている。ごめん、というのと、見せてもいいかな、ということを聞きたげだ。

「ちょっと待っててくれる?」

そういうと杉本は俺の方まできた。

「水原ちゃん、ごめんごめん。うっかりしゃべっちゃってさ、やっぱこう作ったゲームって披露したいじゃん、そういう感じで・・・。ほんとごめん。」

「ん、なにが?」

「え、なにがって水原ちゃん怒ってんじゃないの?」

「え、なんで?」

「いや、だってゲーム作ってんの知られたくないんでしょ?前言ってたじゃん。」

「ああ、そっか・・・。」

それを気にしてたのか。たしかに前にそんなことを杉本に言ったな。

「いや、いいよ、もう。」

「え?いいの?」

「ああ、いいよ。もう気にしてない。」

「じゃあランサーのこと話すよ、俺。大丈夫?ほんとに?」

「いいって言ってんだろ。別にもう気にしてないよ。」

「なんだよ、もうー。」

杉本は俺の肩をバシバシと叩いてきた。

「水原ちゃんそういうのは早く言ってよ、水原ちゃんにぶっ飛ばされると思ってヒヤヒヤしてたんだから。んじゃちょっとみんなに俺のランサーお披露目してくるわー。」

じゃないだろ」

「あ、そうだったそうだった。わかってるって水原ちゃん。そういうとこ細かいよね。」

杉本はクラスのやつらの輪の中に戻っていった。

「ジャーン、これがランサーでっす!」

おお、と声が上がっていた。

俺はそれを遠くから聞いていた。素直に嬉しかった。

ランサーは俺と杉本の2人で作った自信作だ。だから秘密にすることなんてないし、むしろちょっと自慢したい、ほんとはそう思っている自分もいた。だからもしかするとちょうどよかったのかもしれない。

その日からしばらく、俺と杉本はランサーのことでいろんなやつから質問攻めにあった。

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