ランサー 第8話

8月。

外はうだるような暑さ。

俺たちは冷房のきいた部屋の中でもくもくとゲームを作っていた。

外の様子なんてどうでもいい。そういう毎日を過ごしている。


連日俺の家に通っている杉本は自分の家のように俺の部屋でくつろぐようになった。寝っ転がってG-engineの本を読むのが疲れてきたときの彼のお決まりの行動だった。

もう2週間以上一緒にゲームをつくっている。だいたいわかってきた。

「できたできた、水原ちゃん、ちょっとこれ見てよ。」

杉本が自分のノートPCのディスプレイを俺の方に向けながら言った。そこにはG-engine上で動作する剣で切った後の斬撃のようなアニメーションが流れていた。

「これが敵を倒したときにでる演出、どう?悪くないっしょ。」

「ああ、そうだな、悪くない。いいんじゃないか。」

「だろー、これ意外に苦労したんだぜ。」

杉本が得意げに言った。

「でもさー、やっぱこだわりだすとすげー時間かかるんだよなー。その辺のバランスとるのがむずかしい。」

その通りだった。

作ってるものは違うが俺も同じことを感じ始めていた。プログラムを書いてはやり直し、また書いては書き直し、その繰り返しばかりしていた。

もちろん前進はしている。

作るもの、作りたいものが決まったからだろう。ゲーム自体は形になってきていた。

実際にゲームタイトル、ステージ選択画面、メインゲーム画面、メインゲームリザルト画面と必要な画面は画像もボタンも仮のものなのでハリボテ状態だがちゃんとゲームができるようにはなっていた。

あとはこれをどんどん洗練させていくだけ。

だけ、といってもここからどう踏ん張っていくかがこのゲームが面白くなるかどうかの境目だ。そういうことが感覚的にわかっていたからか、この数日間は俺も杉本も黙々と作業をしていた。部屋の中にどちらか一方の独り言かタイピングの音しかしない日も多かった。

でも。そういう日は決まって作業の進捗はよかった。


そしてついに。

俺たちのはじめてのゲームができたのだった。

夏休みも終わりに近づいていた。

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