ランサー 第6話

二人でゲームをつくると決まったものの、開発の進捗はイマイチだった。

企画が決まらないのだ。

理由はいろいろありそうだが、「よし、これをつくろう。」というところまでいかない。

そこでまず俺たちは状況を整理することにした。

「まずさ、何系のゲームにするかきめたほうがいいんじゃないかなー。」

「そうだな・・・。杉本はなに作りたいんだ?」

「もちろんRPGっしょ!演出もド派手なやつにしてやり込み要素も満載のRPG、そんなんがいいなー。ね、水原ちゃん。」

「・・・。それ2人で作れると思ってんのか、お前?」

「え・・・。そこは水原ちゃんがなんとかこう、どーんとさ。」

「無理。」

「・・・だよねー。」

沈黙。

「じゃあ水原ちゃんはどんなの作りたいのさ。」

「俺?」

「そうそう、水原ちゃん。さっきから俺ばっかじゃん。水原ちゃんはどんなのがいいんだよ。」

確かにさっきから実現可能かどうかにばかりが気になり自分が何を作りたいかについて考えをまとめられなかった。

「いや、俺もほんとはRPGを作りたいんだ。」

「でしょー。」

杉本はすかさず合いの手を入れる。杉本と話をしていると普段口数が多くない俺も喋らされる、それはこういうのがうまいからだろう。

「ああ。でもな、どう考えても難しいんだよ。形にできる気がしない、形になんとかなっても面白くなるかどうか・・・。」

G-engineがあるからといって俺たちは何でも作れるわけではなかった。

なんでも作れそうな気がしてしまう。が、なんでもというわけにはいかない。

「うんうん、わかるよ水原ちゃん。でもそこはさ、とりあえずやってみる、ってことにしない?」

「とりあえず?」

「そうそう、とりあえず。これ割と大事。俺さ、こんな性格じゃん、だからよく誤解されるんだ、こいつ何も考えてないんじゃないか、てね。でもさ、俺は俺なりに考えていろいろやってんだよね。それが"とりあえず"やってみる、ていうことなんだ。」

珍しく杉本が真面目に、本気な顔をして話していた。

「それで?」

思わず聞き返す。

「うん、それでね、つまり俺は失敗しても、周りにバカにされてもいいからまず始めることにしてんだ。普通の人ってさ、そういう状況の時ってさ逃げたり、避けたりするじゃん。そういうとき俺はその状況にとりあえず飛び込むことにしてんだよね。」

こいつけっこう考えてるんだな。素直にそう思いながら聞いていた。

「なるほど。」

「だからさ、今回もとりあえず作ってみようよRPG。それが失敗してもいいし面白くなくてもいいよ。やってみることが大事な気がするんだよね。」

「・・・。」

杉本の言う通りだった。俺は作れるかどうか、まずそこに答えが出せるかどうかばかり考えていた。少し考えてから俺は杉本に言った。

「そうだな。お前のいう通りだよ。RPGにしよう。」

「お、いいねいいね。オッケー、じゃあとりあえずRPGに決定、と。」

杉本は嬉しそうに言った。子供のようにはしゃいでいる。

「杉本、RPGでいいんだけどさ、ちょっとライトなRPGにしないか。」

俺はノートにイメージしたゲーム画面を書きながら話し始めた。杉本は俺のノートを覗き込む。

「俺がはじめてちゃんと作った横スクロール型のアクションゲームがあるんだ。それは単純にプレイヤーはキャラクターを操作して敵を避けたり穴をジャンプして回避したりするだけのゲームなんだが・・・」

俺は以前作ったゲームの簡単な操作画面をノートに書いた。

「うんうん、普通のアクションゲームだよね。」

「ああ。それでこれをベースにRPGの要素をプラスする。つまり・・・」

「つまりキャラクターを強化したり武器を強化できるようにして、ってことだよね。うんうん、悪くない、俺いいと思うよこれ。」

杉本には俺が作りたいゲームのイメージが伝わったようだ。

「そう。RPGでよくあるマップとかそういうのはないけどキャラの育成はあるからまあRPGっぽくはなるだろう。」

「全然大丈夫だって、これでいこう。」

「いいのか?」

「え?水原ちゃん嫌なの、これ。」

「いや、そういうわけじゃない。念のため聞いたんだ。」

「念のため・・・?水原ちゃん自信持ってよ、これいい案だって。これでいこうぜ。」

こいつただのお調子者だと思ってたが違うな、俺の勘違いだ。頼りになるやつだ。

「ああ。じゃあこれでいこう。」

「にしし、じゃあやりますかー!」


予想外に時間がかかったが2人でつくるゲームのイメージが決まり、俺たちは作業をはじめた。

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