ランサー 第3話
7月。
夏休みまでもう少し。
俺は夏休みに開発するゲームの企画を相変わらず練っていた。
ただ。進捗はあまり芳しくなかった。
進捗が芳しくない理由ははっきりしていた。
何個企画を考えても面白いと思えないのだ。そもそもアイデアがでてこない、というのもひとつの理由だが。
それを知ってかか知らずか、杉本が俺のところにきて思いもよらぬことを言ってきた。
「水原ちゃん。突然であれなんだけどさ・・・。」
珍しく神妙な面持ちの杉本。
「俺もゲーム作りたいんだ!」
「は?」
何言ってんだ、急に。そう思っていた。
「は?、じゃないよ水原ちゃん。俺は本気なんだ!よくいうだろ、本気と書いてマジってやつ、あれあれ。」
いや、そこじゃないだろ、と。俺が話し始めるより先に、杉本はまたぺらぺら話し始めた。
「言いたいことはわかるよ、水原ちゃん。でも俺はマジなんだ、決めたんだよ。俺も水原ちゃんと一緒にゲームをつくるって。」
いや、なんで勝手に決まってんだ、突っ込み所が多くてついていけない。
「だからさ、水原ちゃん。教えてくれよ、作り方っていうの?」
多分これは断れない流れなんだろう。そう俺は直感した。
こうなった杉本は止められない。
素直でど直球な杉本は嘘がつけない、つまり今こいつが言っていることは本心ということだ。本当にゲームを作りたい、と思っている。少なくとも今は、か。
「ふう・・・」俺はため息をついてから言った。
「いいけど。どうした、急に。」
「理由はないよ、別に。でも・・・」
杉本は頭をかきながら続けた。
「水原ちゃんがゲーム作ってるの知ってちょっと興味がわいたんだ。でネットで少しだけ調べてたらG-engineていうのがあるの知ってさ。それ調べてみたら
杉本の口からG-engineという単語がでてくるとは思わなかった。
ほんとにちゃんと調べたことがわかった。
「G-engineなら教えてやるよ。」
「え?水原ちゃんG-engineわかるの?」
「ああ、この前話したゲームもG-engineで作った。」
「じゃあ水原ちゃん、頼むよ、G-engine教えてくれよ。このとおり!」
杉本は俺に向かって両手を合わせて拝んでいた。調子のいいやつだが・・・、まあいいか。
「わかった。ただ俺もわかんないことはあるからさ。多分一緒に勉強する感じになると思うけど、それでもいいよな。」
「全然オッケー!悪いなー、水原ちゃん!んじゃよろしく頼むよ!」
俺たちは夏休みに一緒にゲーム開発をする約束をした。
そして。長い夏休みがはじまった。
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