ランサー 第2話

「水原ちゃん、なーにしてんの?」

気づくと杉本が横に立っていた。企画作りに夢中になっていて気づかなかった。

「・・・いや、別に。宿題してるだけ。」

それとなく、書いていた新しい企画案のページを隠した。

「え、なんの宿題?そんな絵書いたりする宿題なんてないっしょ。」

「・・・」

面倒だ。素直にそう思っていた。

正直言うとゲームをつくっていることは学校であまり知られたくはない。

「おーい、水原ちゃん、どうしたのさ?」

黙りこくっている俺を見て不思議そうに杉本は言ってきた。

「いや・・・。」

うまい言い訳が思いつかない。

ここで変にごねるのもあとでさらに面倒なことになる、そんな気もする。それならいっそ話した方がいいかもしれない。そう思った。

「杉本。」

ペンを机に置き俺は杉本の目を見た。

「他の人に言わないのならちゃんと話すよ。」

杉本に向かってゆっくりと言った。

「え、水原ちゃん・・・。なんかやばい話なの?」

俺の雰囲気を察してか杉本が逆に不安な顔をした。

「いや、別にそんなたいした話じゃない。でも俺は真剣にやってるから茶化されたくはない。そういうこと。」

「わかったわかった・・・。約束する。言わないって約束するよ。だからそんな怖い顔すんなよー。」

杉本はちょっとビビっている。その様子を見てから俺は言った。

「ゲーム。」

「え?」

杉本が反射的に聞き返してきた。

「ゲームつくってるんだ、いま。それでこれはその企画。」

俺は隠したノートのページを杉本に見えるようにして言った。

「夏休みにつくる予定のゲームがこれってこと。以上。」

「え、ちょ・・・、水原ちゃんゲームつくれるの?」

杉本は興味津々という感じでいつもより早口になって質問をしてきた。予定ではこれで会話が終了するはずだったんだが。

「ああ・・・。ひとつだけならリリースした。」

俺は渋々答えた。

「え、まじで?!すげー!」

杉本のでかい声が教室に響く。クラス中の生徒がこちらを向いた。

「あ、悪い・・・。」

杉本は申し訳なさそうに俺に向かって言った。

「はあ・・・。まあ、いいや、気にすんな。」

「でもさ、水原ちゃん水原ちゃん。これマジすごいことだって。もっと自慢していいって。」

杉本はやけに興奮していた。

そのあともやけに絡んできて昼休みが終わるまでずっと話しかけてきた。正直、企画がまとまらなくて鬱陶しかった。

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