ランサー 第1話

ゲームを作り始めたのは今年の5月のゴールデンウィークだった。

きっかけはマルチプラットフォーム対応のゲーム開発環境G-engineジーエンジン

マルチプラットフォームというのはG-engine上で開発したゲームをコンシューマ向けゲーム機での実行ファイルはもちろんスマートフォン向け、そしてWeb上で動作可能な実行ファイルまで作成できるということだ。G-engineひとつで(もちろんG-engineを使いこなす必要があるが)、様々なハードウェア上で動作可能なゲームを開発することができる。

ゲームをつくる方法はいくつもある。

スマートフォン向けゲームを作りたいならそのOSに対応した専用の環境でつくる方法もある、Web上であればWeb環境で動作するプログラミング言語を用いてつくることだってできる。問題はそれぞれの環境ごとに必要とされる知識、技術がバラバラなことだ。例えばプログラミング言語が変わったからといってプログラムをかく基礎知識があればそれは大した問題ではない。ただそれがいくつも重なるとゲーム開発者にかかる負担は相当なものだ。

一番肝心の、つくりたいゲームをつくる、おもしろいゲームをつくる、ということを実現するまでに時間がかかりすぎるのだ。

それを助けてくれるのがG-engineというわけだ。

G-engineはG-engine上で動作するプログラミング言語を用いて開発をすることでマルチプラットフォーム対応のゲームをつくることができるようになっている。

それだけではない。

ゲームにとって肝心の演出、アニメーションだってG-engineでは容易に表現できるようになっている。炎の魔法をだすときにメラメラもえる炎を出したいとする、それをG-engineではプログラムをかくことなく実現可能だ。キャラクターが走ったり跳んだりするアニメーションだってプログラムをかく必要はない。G-engineのすごいところはまだまだあるが、俺を含め世界中のゲーム開発者がG-engineに夢中になっている理由はおいおいわかってくると思う。

そして。

俺はこのゴールデンウィークからG-engineに夢中だった。

毎日毎日G-engineでゲームを作っている。

といっても。

ちゃんと形にできたものは1つだけ。

正確には練習用に作成したゲームがひとつあるがあれを数にいれるのは忍びない。

作ったのは横スクロール型のアクションゲーム。

プレイヤーはキャラクター(とくに名前はつけなかった)を操作してゴールを目指すという単純明快なゲーム。もちろん途中、落とし穴や火の玉、モンスターもでてくるのでそいつらはうまく避けていく必要がある。

ただステージはひとつだけだだった。

はじめの俺の脳内想定ではキャラクターは攻撃もできて、途中で獲得できるアイテムを使用してパワーアップもできる、そしてステージも10個くらいは用意したかった。タイムアタックも用意して全国のプレイヤーと競争して・・・と、妄想を膨らませていた。

が、うまくいかなかった。

何度も何度もチャレンジをしたが思っているように動いてくれなかったり、バグがでてしまったり、そもそもどうやってつくったらいいかわからなかったり。別に満足はしていない。満足はしていないが、つまりはこの一つ目のゲームはその時のぼくにつくれる限界だった。

とはいえ。

このはじめてのゲームをちゃんと公開できたのはうれしかった。

正直、ストアに自分の作ったゲームがならんでいるのを見たときには、自然とにやにやしてしまった。今まで味わったことのない達成感。そしてそれと同時にまだまだやらなきゃいけないことも見えてきた。

もっともっと勉強しておもしろいゲームをつくろう。そう決めた。

夏休み。

夏休みを全部つかってもっとおもしろいゲームをつくってやろう。

そう思い、俺は学校でもこっそりゲームの企画を練っていた。

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