第7話 打撃練習

初めて入ったお城の室内練習場は大層立派だった。球場程の大きさはなかったものの、内野程の広さは十分あり、ちゃんと4つのベースが置かれ、白線もきちんと引かれていた。本塁は五角形ではなく、他の塁と同じ四角形だった。王女が考えた球技をやるためのグランドだった。

壁際に並んだ椅子の辺りに王女がいた。そしてその横には金髪碧眼のおじさんがいた。ひょっとして婚約者なのか?僕はすこし嫉妬してしまい、悪い顔をしてしまった。

王女とそのおじさんは僕に気づくと、小走りして近寄ってきた。

どうしたの?機嫌悪いじゃない、何かあったのと?という王女の言葉に、僕はいいえとだけ答え、黙っていた。すると王女はおじさんの紹介を始めた。彼はフィンランド人の旅行者で、フィンランド野球のコーチだそうだ。それでピンと来た。王女は、野球の変種であるフィンランド野球にヒントを得て、この国独自のソフトボールのルールを考えたのだ。僕からソフトボールの話を聞いた翌日、島内のフィンランド人で、フィンランド野球に詳しい人を強権を発動して探させ、招いたのだ。

今日はとにかく打撃練習だけやるわよと王女はいい、ヘルメットをかぶりバットを持って右打席に入った。

王女のルールによると、投球は次の打者がファウルラインの外、本塁の左右を結んだ延長線上から行なう。ご丁寧に、投球場所が丸い白線で示されていた。その横には山ほどの球が入ったかごが置かれていた。

王女は僕に、さっさとヘルメットとグローブを着けてサークルに入りなさい。そして投げなさいと命令した。

今日はほとんど仕事をしておらず、何球でも投げられそうだった。ふと内野を見ると、左右の遊撃手が入っていた。おそらく騎士団の精鋭だろう。僕は球を投じ始めた。

1球目は空振り。2球目は右塁側にファウル。危ないな〜。もっと打ちやすく投げなさいと、檄が飛ぶ。3球目は内野ゴロ。左遊撃手がさばいた。王女は右打者なので、近い方の塁、この場合は左塁に走る。打つだけと言っていたが、王女は左塁に向かって走った。体の回転方向と進行方向が一致しているため、走りやすそうだった。なかなか難しいわね〜なんて言いながら、また打席に入った。そんなことを1時間ほど繰り返し、王女は食事のためにお城に帰り、僕とおじさんは歩いて各々帰った。



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