Day11

 窓から外を見ると、今日は大雨が降っている。雨が窓ガラスに打ちつけられ、風も強そうだ。外も薄暗い。この病棟から抜け出すことの出来ない涼介にとっては、特に関係のないことではあったのだが。

 昼過ぎに香と優が顔を出した。

「どうなのよ調子は」香が尋ねた。

「まあまあだよ」

「めっちゃ退屈って感じだね」優が口を挟んだ。

「ああ。もう退院しようと思っているんだ」

「もうちょっと、ゆっくりしてればいいのに」

「いや、夜ゆっくりと眠れないのはきついよ。それに入院費だって嵩むばかりだし」

「隣の人のいびきのせいで?」

「ああ」

「で、いつ退院するつもりなの?」香が聞いてくる。

「土曜や日曜は退院できないみたいなんだ。一番早くて、月曜なんだってさ」

「それじゃあ、月曜に退院するの?」

「そうしようと思っている」

「それじゃあ、私来てあげようか?」香が言った。

「いや、一人で大丈夫だろ」

「荷物とかあるし、どうやって帰るの。タクシーだって大変だし」

「それじゃあ、頼めるのなら頼んでいいかい?」

「いいわよ。朝10時頃くればいいのね」

「申しわけないけど、お願い」

「母さんはどうしてる?」

「まあいろいろ心配事が次から次から出てくるみたいだけど、元気にしてるよ」

「そうか」涼介は母の姿が目に浮かんだ。

 それから、看護師にエレベータ前の鍵を開けてもらい、香と優と三人で2階の売店に行った。入院後初めて売店に来た。雑誌やのど飴を買い、部屋に戻った。

香と優はそのまま帰っていった。

 


 佳奈の部屋には担当医が顔を出していた。丸顔で小太りの男の医師だ。

「もう怪我は大丈夫ですね。気持ちは落ち着かれてますか」

「はい。もう大丈夫だと思います」

「もうすぐ入院してから1週間経ちますね。もう退院しても大丈夫ですよ」

「そうですか。先生、ありがとうございます。子供達の事もあるので、出来れば月曜には退院したいのですが」

「分かりました。外来通院に切り替えましょう。いっぱいお子さんに甘えさせてあげて下さい。師長には私から言っておきます。」

「ありがとうございます」

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