第2話
学校は苦痛でしかない。
同志もしゃべる人もいない、ただ勉強だけを進めるのはとても簡単なことだと思うがグループワークとかいう日本人が好きそうな連携をしなければならないことがある。なぜ僕は大学に行くだけのために3年間も学校に行かなくてはならないのか。県内でも3本指に入る進学校を選んだが、偏差値の高い大学を狙えるような授業ではなかった。やはり高校から県外を狙うべきだったと後悔しながらも実家から通えるという条件が出されたはずなので諦めるしかなかった。親の出す条件を満たせば僕には確実な未来があるのだから苦ではない。今日も日課である朝の学習のため図書室に来ている。
静かな図書室にガラガラと図書室の開閉音が響く。毎日来ている女子生徒の顔が本棚の間から少し見えた。まっすぐカウンターに進み返却手続きをする。くるっと体の向きを変えたので顔を下げる。次の本を探しにと近くを通る。小柄ではあるがひ弱ではなさそうだ。そんなことよりも今ある課題を進めなくてはと思い手に取ろうとした筆記用具が転がり落ちた。拾おうとすると手がもう1つ。その手に持ち上げられた鉛筆。
「はいっ。」
顔をしっかり見たのは初めてだ。
「あ、ありがと。」
そっけなく受け取る。彼女は軽く微笑むと本棚の間を抜けていった。後ろ姿を目で追う。ふと自分の世界に戻ろうとノートと参考書に食らいつくが、なぜか彼女の顔は頭から離れなくなった。
心臓が室内に響き渡るように高鳴っていた。
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