第54話
コンコンと部屋のドアを叩く。
普段は前を通るものの、5年くらい前から詳しく語れない場所となった弟の部屋。
少しすると、わずかな隙間を開けてこちらを見る目が見えた。
「あのね、少し聞いてほしいんだけど。」
じっと見つめてくる。
「手伝ってほしいんだけど、厚かましいかな、えと大事な作文しなきゃなんだけど」
と言った瞬間、ドアは閉められた。
まあそうだよね。人の作文なんて作ってもつまらないし、まず宿題やってもらってるから無理中の無理だろうなと思い、ドアから一歩引いて自室の方に体を向けた。
すると、弟の部屋のドアが少し開き、なにかが飛んできた。
それはちぎったあとのメモ用紙だった。急いで拾うと「文字数は?」
と殴り書かれてる。
さっきより少しだけ広く開けられたドアから弟の顔が見える。髪が伸び放題で思春期特有の凹凸が頬に見えた。
「ありがとう。言ったら入試なんだけど、お姉ちゃん作文書くの苦手で、お手本で書いてほしいかな...というか書いてほしい。」
部屋から大急ぎでスマホとパンフレットを持ってくる。
「こういう感じのことを書いてほしい。」
スマホの画面を見せながら説明した。
すると手を差し伸べてきた。
私は一瞬考えて、メモを手渡した。
「わかった」
と書かれたメモを私に見せる。
「ありがとう。」
こんな都合の良いことでいいのだろうか。
少々考えて、弟が書き足し私に見せた。
「お姉ちゃんの頑張ったこと教えて」
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