第52話
僕の胃は限界をむかえ、食道はじりじりとしていた。お腹の中はモワモワとどんどん大きな雲が生成されていく。まさにそんな気分だ。
自習室の何も音をさせないように気を使う空気が、余計に僕の心音を響かせる。
頭の中では小人たちが不満を囁きあっている。
この過去問は何度も解き直している。だからこそ一つでも間違うと狂いそうになるのだ。
心を落ち着かせるため、テキストから目を離した。いつも使っている電子辞書はクイズゲームが入っていたと思う。
開くと、聞いたことのある雑学が問われるものだった。10問中10問正解!の文字に心が少し動いた。
こんな簡単な問題を10問正解しただけで褒められるなんて...。
またあの日が脳裏に浮かぶ。
破られた音が再生され、身が一瞬縮こまる。
褒められたい。その一心で進めてきた。一度でいいから褒めてもらいたい。
電子辞書を閉じた音が僕の心が閉じた音に思えた。
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