第48話
両親はこの事実を認めてくれるだろうか。
僕の手には模試の結果が握られていた。
第1志望校に並ぶBの文字。
今までA以外を取ったことない僕にとっては未知のエリアだった。汗で紙が歪んでいく。焦点も定まらない。
先生の言葉は異国語に聞こえ、文字はミミズにしか見えなくなった。
あっという間に放課後になった。
一歩また一歩と自宅に近づくが、もう頭がいっぱいだ。
母は帰ってきた僕をみると無言でこちらに手を差し伸べてきた。これはいつものことで、成績が配られる日に手を差し出すのだ。少しためらったが、渡すしかない。
紙に目を移すと、目の大きさがわずかに変わった母。
そう僕は親の条件を破ってしまったのだ。
「B判定を取っていいって言いましたっけ。」
「いえ、違います。」
「そう。この点数は取っていいものじゃない。」
紙を横に割き、くずかごに入れた。
この場では僕はその音を聞くことしかできなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます