第48話

両親はこの事実を認めてくれるだろうか。

僕の手には模試の結果が握られていた。

第1志望校に並ぶBの文字。

今までA以外を取ったことない僕にとっては未知のエリアだった。汗で紙が歪んでいく。焦点も定まらない。

先生の言葉は異国語に聞こえ、文字はミミズにしか見えなくなった。


あっという間に放課後になった。

一歩また一歩と自宅に近づくが、もう頭がいっぱいだ。


母は帰ってきた僕をみると無言でこちらに手を差し伸べてきた。これはいつものことで、成績が配られる日に手を差し出すのだ。少しためらったが、渡すしかない。


紙に目を移すと、目の大きさがわずかに変わった母。

そう僕は親の条件を破ってしまったのだ。

「B判定を取っていいって言いましたっけ。」

「いえ、違います。」

「そう。この点数は取っていいものじゃない。」

紙を横に割き、くずかごに入れた。


この場では僕はその音を聞くことしかできなかった。

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