第44話

うちらのチームは追い込まれていた。

試合展開は押したり引いたりしていたが、前半戦の終盤で一点叩き込まれた。

がこちらも負けずに後半の序盤で返した。1-1の同点。だが、ここで点数を稼いでおきたい。


味方の士気が下がっているように見える。

キャプテンの「声出してこ」にメンバーが「はい」と返すが、みんな必死になりすぎて調和を忘れている。

そして後半残り10分のところだ。この時間はお互いに得点を得やすく失いやすい。

味方も疲れていれば相手も疲れているはずだ。


相手が持っていたボールが運よくサイドに流れた。

それをすかさず奪取するサイドそして、チャンスボールがきた。

サイドからのクロス、オフサイドラインは大丈夫、敵はノーマーク。

あとは決めるだけ。

「おらあ!」

心の中で叫びながら、蹴り上げた。



「「ありがとうございました。」」

試合が終わった。2-1でうちらの勝利だ。

ふらふらになりながらもコートの淵で運動後のダウンのマッサージをしていた。

「お疲れー」

ふゆみんが大きなクーラーボックスを持って近寄ってきた。


「優子お疲れかっこよかったよ!これ食べて、あとみんなにも。」

中には冷凍ゼリーが入っていた。俊敏に動いたあとは冷たいものに限る。


「はー疲れたー。これから帰るのが大変だこりゃ。」

アキレス腱を伸ばしながら、ゼリーをほうばる。

「いっぱい動いてたもんね。お疲れ。」

ふゆみんは立ち上がり他のメンバーにも配り始める。みんな嬉しそうだ。


「ゆうこさーーん、ありがと決めてくれてーー!」

水を持って近づいてきた。先日の練習で一緒になった彼女だ。近くでダウンをし始めた。

「あ、あの時いいボールありがとね。」

「ほんと焦ったわー。」

と言いながら後ろに倒れて、足をバタバタさせていた。


顧問から集合の合図がかかる。

「終わったら連絡してー。」

ふゆみんがみんなに配り終えた頃に

「わかったー。...?」

なぜか右足に違和感がある。ズキズキと痛んでいたものがだんだん大きくなっていくような感覚だ。

「いたっ!」

思わず声が出てしまい、周りのメンバーが集まってきた。

あ、これはやばいやつかもしれない。

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