第36話

「そっか、絵本作家ねー。いい夢だと思うよ。」

いっしょにお昼を食べながら、ふゆみんと向かい合ってパンをかじる。

教室は昼食を楽しむ雑音であふれかえっていた。

「ウチもなー、なんか夢があればいいんだけど。」

なんもなーい。

「今は部活でバカやってて、将来なんて考えられないよ。」

「まあ、私はどんな未来になっても、優子のことはいつでも応援するわ。」

「すっかり元気になりやがって。」

つんつんとほっぺたをつつく。恥ずかしそうに顔を隠そうとする。


素朴な疑問を投げた。

「でも全然絵本作家とか想像つかない。どうやったらなれるの?」

うーんと少し言葉を探していた。

「まず作家とかって自分で名乗ったら作家になれるんじゃない?基準とか、なんかやったらーとかはなさそう。」


「じゃあ今から君は絵本作家だ!ってのもいいかもね。」

「そんな偉大な人とおんなじにされても困るよ。」

「雲の上の存在じゃないでしょ、今からやることでしょ。雲の上は案外すぐそこだったりするじゃん。やるんだったら徹底的にしないとな。」

「優子が超ポジティブウーマンでよかったわ。」

「そりゃどうも。」

なんにしろ、大変そうな道を選んでしまったなあ、ふゆみんは。ウチにはその修羅は無理だわ。

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