第35話

一息置いて喋り始めた。

「たしかに勉強だけが進学の道じゃない。推薦とかAOとかそれなりの枠を用意されている。それに今から何かしらの活動をしておけば、合格の幅はさらに広がる。むしろそういうことを考えて欲しくて、成績を外したんだがなあ。」


「そんなん言わなきゃわかんないですよ。」

いつも言われてしまう。なんで肝心なこと言わないんだ。とか。今更言われても困る。とか。私にはどうやら大切なことを言わない癖があるらしい。

「とにかく。私は学校ではふつうに過ごします。だけど、目指しているものは高学歴とか、じゃなくなるんですけど、学校的に大丈夫なんですか?」

彼女が視線を外し、俯きつつも聞き返す。


「そこは私が保証する。他の先生に理由を話しておこう。」

少し下を向き、どう言い訳するか巡らせる。

「じゃあ、将来的にはどんなことがしたいんだ。」


顔を上げこちらを見る。

「私は、絵本作家になりたいです。」

彼女の声は自信に満ち溢れていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る