第32話

夕日が眩しい時間はもう終わりそうだ。

図書館の終了を告げる声がけ掛けがはじまり、子供たちは帰っていく。最後までいっしょにいたあの子はまた来てねと笑顔で手を振り帰っていく。

図書館は静寂を取り戻した。

「私たちも帰りましょうか。」

「はい。」

司書さんに礼を言い外に出ると、神部さんが歩きながら話し始めた。

「久しぶりにみらいちゃんの読み聞かせが聞けてよかったわ。私もあなたのファンだったから。」

「私も久しぶりに師匠に、あっいや、神部さんに会えてとても嬉しかったです。」

「...何かあったかもしれないけど、みらいちゃんの読み聞かせは才能だと思ってる。

だからね、自信持って。」

「あ、ありがとうございます。」


お互いに何も言わずに分かれ道までただひたすら歩く。

「あの、また来てもいいですか?」

「もちろん大歓迎よ。いつでもいらっしゃい。」

子供より無邪気な笑顔で答える。


深くお辞儀をし、自分の道を帰る。

私に何ができないかではなく、私に何ができるかを数え始めた。

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