第12話

「彼女は単位が足りないのです。補習でなんとかしましょう。」

「こんな失態は初めてです。なんとかしてください。」

口々に言われる苦情。それはそうだ。

前代未聞、空前絶後と言える。


「私は彼女に成績をつけることを辞めたいと思います。」

学年の教師が集まる会議で発言した私に、多くの注目が集まる。

大きくざわつく。それもそのはずだ。

これも前代未聞である。

「彼女には勉強から離れてもらって自分を考えて欲しいのです。

彼女は隠していたことがありました。勉強が全くできないのではなく、文章が読めないのです。世の中には似たような症状を持つ人が確認されています。彼女のためには、まずは本人が現状を整理しなくてはならないと考えます。」


私の打つ手は彼女を成績という順位から外すことだった。

印刷した紙には偽りの最低点が記載されていた。

考えたらわかることだった。成績が重りになっているならば、その重りを取り外せばいいのでは。

まずはそこからそうすれば、彼女は自分の本質と向き合えるのではないかと考えた。

なんどもなんども様々な面談受けてきた彼女がせっかく打ち明けてくれた機会を無駄にはしたくない。


「よくわからないのですが、先生がそうお考えでしたら試してみるのもありかもしれませんね。」

周りの教師はこの問題に触れたくないらしい。だが誰かが解決してくれればいいという顔だ。

私が動かなければ、彼女は動かない。

彼女にはできないことを見るのではなく、今できることを考えて行動して欲しいと願った。

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