第11話

次の日には何も変わっていないと願いたかった。


いつも通りを装い、図書室に寄って行こうかと思ったが、そこまでの気力が湧かなかった。愛おしく思っていた文字たちが今の私にはただの凶器に見える。

大人しく教室へ向かい、いつもの癖で本を開いてしまう。いつもより文字を愛でることはおろか、直視することさえできなくなってしまった。冷や汗が止まらなかった。

今までの自分には考えられないような感情が生成されている。私は机に伏せ、眠るふりをするしかなかった。


授業が始まる。

返されたテストの最低点は私にならなかった。今回のテスト結果表の最低点より下回る点数だったのに。

クラスから外されたのだ。教室にいるのに、一員ではない。たった一枚の紙切れで。


思わず乾いた笑いが出た。

私の日常は音も立てずに崩れていった。

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