第6話

小さい会議室では私の発言でパニックでいっぱいだった。

「なぜだ?君は...、課題もきちんと出していたじゃないか。」

「それは弟がやるから。頭のいい弟が全てやってくれるから。」

私の弟は学校には通っていないが、頭が良く物をよく習得している。彼には才能があったが、学校という小さな社会が邪魔をするのだ。

「授業はどうしていたんだ?音読が回ったり当てられたりするだろう。」

「教科書の朗読の動画見てたし、わからなかったら隣の人の見てた。」

そっけなくネタバレをしてしまった。

「なによりも君は学校で一番に本を借りている。そして読んでいるが、それはどうなんだ。」

「文章が読めないというよりか、紙面で文字が踊り始めるって言った方がいいかもしれない。足と手を広げて動かしてるのが好きなんです。文字が可愛くて愛おしいから見てたいんです。」

私が文字が好きな所以はそれだけ。文章を楽しんでいたのではなく、文字そのものが好きなのである。

あんぐりと空いた口と、冗談だろと言わんばかりの顔がこちらを見つめる。信じてほしいと見つめ返すしかできなかった。

「わかった。また後日面談させてもらう。」

担任の退室した後の張り詰めた空気が徐々に学校と同化していった。

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