第6話
「それよりシャルル、検挙率ナンバー1とか言ってたけど、腕に自信があるならなんで警備兵なんかになってるんだ? 」
その問いにシャルルは乾いた笑いを上げる。
「軍に入隊してすぐ皆について行けなくなったんだ、体力的な問題で。でっ私、警備兵で開花したんだよね」
「そうか」
「あ、暗くならないで。この警備兵に支給されているビリビリ剣のおかげで、大活躍中なんだから」
ニヒルに笑い、親指を立てるシャルル。
そう言えばそうだった。
劣ると判断された警備兵行きの兵隊達には、切れ味は木刀よりはましと言う半端無く切れ味が悪い代わりに、電撃を帯びた攻撃が出来る魔具の剣、
電撃といっても一撃で気絶させれる威力はないが、凄く痛いらしく同期の奴が試しに腕で受けて一時の間手が痺れて物が握れなくなった事があった。
しかし少なからず魔力を使うと言うことは、危険が増すことを意味する。
その諸刃の剣を警備兵達に強制支給している軍、えげつない。
「シャルル、分かっているとは思うが気をつけろよ」
魔法を使用する。
その絶大な力は、通説では創造主から借りるとされているが、その力を導くために自身の魔力を使うことは間違いない事実である。
そして通常時、人は全身に魔力が満ちた状態なのだが、大なり小なり魔力を消費すると体力と肉体の強度が極端に落ちてしまう。
どれくらい落ちるかと言うと、素足で思いっきり鉄扉を蹴れば指は折れてしまうし、建物の二階から落下して頭で着地するような事があれば死んでしまうこともあるぐらいに。
人の心配をよそに、シャルルはニヤニヤしていた。
「どうしたんだ? 」
「いゃー、私の心配をするとは。さてはお主、このシャルル様に気があるな? 」
からかわれてばかりなのもシャクなので、少し乗ってみるか。
少し溜めを作って。
「…… 俺じゃ、駄目か? 」
シャルルは目を見開いたかと思うと、すぐさま俯いてしまう。
店内の照明が今一つ明るくないため、その表情は見えない。
そして顔を上げたかと思うと、真剣な表情でこちらを真正面から見据えた。
「ごめん、まじごめん」
えっ、真面目に答えてる? て言うか華麗にふられてしまった?
「あはははは、冗談冗談。シグはイー男だと思うよ。ただ私、ゴールド家の悲願とかがあるじゃん。一応最後の手としてそこらはとっておきたいんだ。あっ、ただシグが偉くなったら考えてあげてもいーかな」
「お前はたくましいよ」
「ハッハッハッ、このシャルル様をおちょくろうとは百万年早かったみたいだね」
しかしこのシャルル、いつもこんなテンションなのだろうか? …… なんだかほっとけない奴である。
「そうそう話し戻るんだが仕事を手伝う件は次の満月まで、つまり今日を含めて三日間って事になるがいいか? 」
「ん、満月になんかあるの? 」
「あー。まぁあると言えばあるんだが、直接は関係ないんだよな。ま、流れからいったら、今の任務が終わったらこの街を離れる可能性が高いんだ」
「えっ、いま休暇中とかじゃないの? 」
「任務中だ」
「街をフラフラして酒場で飲む事が? 」
「ただ単に満月まで待機中なだけだよ」
「なにそれ、へんなの」
ハハハッと笑うシャルル。
グラスが空いたので、店員を呼び止めて追加の注文をする。
「でもシグはイー奴だな」
「唐突になんだ? 」
首を傾げていると、視線をそらさず一直線に見つめてくる。
「助けてくれた事は勿論なんだけど、色々と話しててそう感じたんだ」
「そうか? 」
まー、いい奴かどうかは別として、シャルルと話していると何時の間にか飾らずに話している自分がいる。
それは恐らくシャルルが純粋な心の持ち主で、こちらの心の中へグイグイと入り込んで来るため感化されてしまったのかもしれない。
そしてシャルルとの会話、不思議と悪い気はしていない。
「ではサクッと仕事の話をするよ、オッケー? 」
「あぁ」
「オッッケーー?? 」
同じ様にそう言えと?
「……オッケー」
前言撤回、やっぱり超めんどうくさいです。
「ストームを捕まえる件なんだけど、いつどこに現れるか分からないから、まだ皆で手分けしてストーム及び手掛かりを探している最中なんだよね。で今日はもう遅いしお酒も入っちゃったからこれでお開きにして、明日の朝から情報収集始めるから。シグは都合の良い時に顔出してくれる? 」
「さっきも言ったように、満月までずっとフリーだから俺も朝から手伝うよ」
と言うことで明日の午前中、シグナは警備兵の詰め所に顔を出すことを約束し、二人は酒場をあとにするのであった。
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