第97話 布団の取り合い

 寒い。

 エアコンも入れていないのに寒い。もう秋か?よく見るとわたしに掛け布団が半分くらいしか掛かっておらず、肩が出ている。わたしは掛け布団を引き上げた。しかし掛け布団は動かない。猫がいる。掛け布団の上で、寝ているのだ。なんとか猫をずらし掛け布団を引き上げなければ風邪を引く。わたしは掛け布団を精一杯引っ張った。しかしわたしも半分寝ぼけているのだろう。思うほど力が出ない。どうするべきか。仕方がない。猫をずらそう。わたしはそっと猫の背を押す。すると猫はわたしの手に足蹴りをしてきた。

 やはり、という思い。猫は退く気はないようだ。

 わたしは作戦を変え、掛け布団の下から猫を押してみた。猫は起き上がり座り込んだ。わたしはそれを見逃さず、掛け布団を引っ張った。すると猫は体勢を崩しベッドから降りていってしまった。わたしは、ごめん、と心の中で猫に謝り、掛け布団をきちんと掛け、寝転んだ。

 ふぅ、これで眠れる。と思った時だった。

 猫がわたしの体に飛び乗ってきた。やはりベッドで寝たいらしい。猫はそのままわたしの上で丸くなってしまった。

 仕方がない。猫にとってはわたしもベッドの一部なのだろう。

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