第20話 緑のた○き

 わたしはカップそばの「緑のた○き」を食べようと、お湯を入れテーブルに置く。三分経ったのでテーブルの前に行くと、カップそばの横に猫がいた。ちょこんと座っている。「早く食べようよ」と言っているようだ。それはわたしのごはんであって猫のごはんではない。

 わたしはとりあえずテーブルにつき、カップそばの蓋をはがす。すると猫が顔を近づけ匂いを嗅いでいる。だから、これはわたしのごはん!

「はい、どいてー」とばかりに、わたしは猫を押しやる。しかし、猫は諦めない。わたしが箸でそばをすくうと匂いを嗅ぎ、右手に持った箸を手前に引き寄せようとする。

 わたしは、さすがにまずいと思い、猫をテーブルの下へ降ろす。しかし、食欲魔神である猫が諦めるはずがなかった。猫は再びテーブルに上がると、わたしの箸の先にあるそばにかぶり付いた。熱かったのだろう。首を振っている。が、そばを放そうとはしない。そしてそばをくわえたままテーブルの下へ降り、食べ始めた。わたしは呆然とその様子を眺めてしまった。

 猫はそばを一本食べ終わり、またテーブルに上ってくる。美味しかったらしい。そばを再び食べるべく、前足をカップそばの中に入れようとする。

 まずい。これ以上食べさせては健康に悪い。

 わたしは、すぐにカップを持って立ち上がり、キッチンのシンク前へ向かう。仕方がない。立ち食いだ。しかし、食欲魔神は諦めない。キッチンのシンクに上り、カップに手をかけ引き寄せようとする。

 危ない!つゆがこぼれる!

 さっと体の向きを変えて、カップを守る。そして、勢い良く食べきる。

 わたしがホッと一息つくと、猫が背中に張り付いている。よっぽど食べたかったらしい。しかし、ほだされてはいけない。これが毎日、毎食のことなのだ。先に猫にごはんをあげているのに、なぜかいつもわたしのごはんを食べようとする。

 そして今日も食欲魔神(猫)との戦いは続く。

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