第21話 キッチンマット

 今日は晴れだ。洗濯日和だ。普段の洗濯に加えて、マット関係も洗おうかなぁ。キッチンマットを手にして振り返ると、猫が見ている。


「ん?どうしたの?」


 猫はわたしをじっと見つめる。そしてマットを見て、またわたしを見る。その目には、「それをどこに持っていくの?」と言っているようだ。

 怖い。目で人を射殺せそうだ。そう、目力が強い。目力はいつも強いのだが。

 どうしよう?いや、でもキッチンマットは洗わなければ汚い。

 そういえば猫は、よくキッチンマットに寝そべっている。自分の場所を取られた気分なのか?


「あのね、今日このマットを洗おうと思ってるんだけど……いいかな?」


 猫にお伺いを立てるなど、はっきり言って変だろう。他人が見ていたら、「何やっているの?」と呆れて言うに違いない。しかしこの家での序列は猫の方が上だ。きちんとお伺いを立てなければいけない。


「このマット、洗うからね」


 もう一度猫へ念を押す。

 猫は先ほどからずっと目を逸らさずこちらを見ている。マットを洗うことに納得はしていないようだが、汚いマットをこのままにはしておけない。一応お伺いも立てたので、こちらから目を逸らし洗濯機に放り込む。猫は興味を失ったのか、別の部屋へ移動していった。

 夕方、洗濯してふわふわになったキッチンマットの上に、猫が寝そべっていた。

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