第15話 噛みぐせ

 ウチの子(猫)は噛みぐせがひどかった。わたしに遊びの延長で噛みつくのだが、加減することを知らなかった。わたしの手は擦りむけたり血が出たこともある。

 わたしはまず動物病院の先生に相談した。すると先生やスタッフの方は、「痛い」と言ってそういう素振りをすると、猫もわかってくると教えてくれた。わたしは猫に噛まれた時、早速「痛い!」と言って痛がって見せた。しかし次にわたしを噛む時も、猫は手加減をしない。何度かやってみたが一向に改善しない。

 どうしたものか悩んでいる時、猫がわたしの手に思いきり噛みついてきた。わたしは猫を捕まえ、わたしが噛まれた手と同じ猫の手を噛んでみた。


「キャン!」


 猫はびっくりしたようだ。だがわたしの痛さを猫にもわかってもらわなければ、と思ったのだ。すると、それから猫は変わった。わたしを思いきり噛むのではなく、甘噛みになったのだ。

 普通の子猫は兄弟との遊びの中で噛んだり噛まれたりして甘噛みを覚えるが、ウチの子は早い段階でウチに来たので、遊びの中で学ぶことが出来なかった。だからわたしが兄弟の代わりをしたのだ。

 しかし後で本を読むと、「人間が噛みついてはいけない」と書いてあった。わたしは冷や汗が出る思いだったが、ウチの子が良い方へ向かって良かった。

 ウチの子がわたしを仲間だと思っているのは、これが原因かもしれない。

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