第14話 最後の扉

 ウチの子(猫)が子猫の頃、一部屋で過ごさせることに失敗し、入られたくなかったトイレや洗面室にも出入りするようになった。しかしあるひとつの扉だけは出入りしたことがなかった。それは玄関の扉だ。猫を外に出す気はなかったので、玄関から出たことはないのだ。

 ウチの玄関は二重になっている。外へ出る扉があり、玄関を入ってすぐに内扉がある。

 猫は内扉と玄関の扉の間には出たことがある。わたしが内扉を開けたら出てきたのだ。でもわたしが気付いて、玄関の扉を開けることはなかった。しかし猫にとって知らない扉は気になるらしい。

 ある日の朝わたしがごみを出しに行こうと内扉を開けると、猫がやってきた。どうしても玄関の扉の外を見たいらしい。わたしは少しならと思い、猫を抱っこして外を見せようと玄関の扉を開けた。すると猫は外の空気を吸った途端、わたしの胸を蹴り家の中へダイブした。

 猫が外へ行くのはキャリーバッグに入れて病院へ連れていく時だけだ。どうやら猫にとっては外イコール病院と思っているようだ。確かに猫がそう思っていても不思議ではない。

 それ以来猫は玄関の扉だけは近づかない。宅配便がきて玄関の扉が開いていても、遠巻きにしている。

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