第7話 後ろ

 普通人は、いちいち後ろを振り返らないと思う。

 だが猫はいつの間にか後ろにいることがある。足音もしないし、気づかないのだ。そして振り返りざまに足を踏み出すと、猫の尻尾を踏む。

 猫が小さい頃わたしの後ろをついてくることがあった。その時は後ろを気にしていたように思う。

 しかし事件は起こった。

 まだ子猫なのであちこちの隙間に入っていて、気づかないことも多かった。だからある夜、寝る時になっても猫がいないことに不思議はないと思った。

 だが一応猫に声をかける。


「寝るからねー!おやすみ」


 そして電気を消す。すると、


「ピキャーッ」


 えっ、今の声どこから?


 わたしは電気を点けて洗面室の扉を開ける。するとそこから猫が出てきた。

 いつの間に洗面室に?

 あぁ、わたしが歯みがきをした時か!一緒に洗面室へ入り、わたしが先に出て扉を閉めてしまったのだろう。鳴かなかったのでずっと気づかなかった。猫は三十分近く洗面室にいたということになる。電気の明かりが洗面室の扉から漏れていたのだろう。それをわたしが消したことで、真っ暗になって怖かったのかもしれない。

 今度扉を閉める時は後ろを確認しよう。

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