第3話 最初に爆弾、これぞ必勝

とりあえずまた休み時間。


「アユアユー、行くよー」


と案の定サッキーに捕まった。

他の女子はというと戦闘準備をしている。

前回、隣のクラスの女子に転校生との接触を阻害されたので入念に計画を立てているようだった。


「アルファとガンマは屋上から窓を割って進入・・・」


さながらどこぞのテロ引き篭もり対策用本部のような迫力を感じる。

命短し恋せよ乙女。

どちらかと言うと命など知るか!恋のために仕留めよ乙女な気もする。

深く考えないようにしよう。

男子は毛ほども興味が無いのか一人でゲームをしたり、早弁したり、ゲームをしたり、鼻をほじったり、ゲームをしたり...

会話が無い。どんだけゲームしてんだこいつら。

どうでもいいけどクラス内に友達いないのかあんたら。

等と考えていたらサッキーに動く意志が無いと判断されまた肩に担がれた。

ちょっとした荷物扱いである。

案の上、また登場した菊池を倒しクラスから出ようと思ったところでそれは起こった。


「あのー、すいません」


一人のイケメンがクラスのドアの前で立っていた。


「「「さ、桜木きゅん!!!」」」


あー、あれが例の転校生なのかな?と思った瞬間。

戦闘態勢に入っていたクラスの女子達が一斉にそちらに振り向いた。

怖い。

そしていつの間にか作戦プラン等が書いてあった書類がしまわれ、一斉に化粧道具を取り出し高速で顔を整えだした。

この間わずか10秒。

怖い。

私がこの人達と同じ性別であるという事実が何より怖い。というか同じ人間である自身が無い。

そして女子団体のリーダー格の男漁りプロのディスポーザーがくねくねしながら近寄っていった。


「キャッ、躓いちゃった~♪」


とわざとなのにわざとじゃなく見えるように体の捻りを利用し、うまい具合に自分の胸が相手に当たるよう計算された動きを披露しながら転校生にぶつかりに行った。

純粋にすごい!

なんという精錬された動き!

まるで何百、何千と繰り返された動きのようだ。

だがしかし


ヒョイ


転校生が避けた。

くずれ落ちそうになるディスポーザーさん。

だがしかし片足を軸にくるっと回りさらに追撃して押しかかろうとするディスポーザーさん。


ヒョイ

バタン


また避けられた。

さすがに無茶だったのか今回は倒れた。

でも凄いよディスポーザーさん。

あんたの執念は尊敬する。

そしてリーダー格であるディスポーザーが沈んだことによって他の女子達がワラワラと集まって転校生を囲んだ。


「ねぇねぇ、何しに来たの?もしかして私目当てだったりして~」

「私とあなたは前世からの付き合いが・・・」

「レッツ、ダンシング」


凄いなイケメンって。

凄いな女子って。


「ほら、アユアユー。あのイケメン君が転校生だよ」

「あ、うん」

「どうよ?」

「えっ、何が?」

「もう!男としてありかとか心がときめくとか」

「いやー、無い」

「なんでSOバット!?」

「いや、あれよ目の保養程度でいい。というかサッキーその英語絶対間違ってる」


とりあえず目的は達成したのでサッキーに肩を担がれた状態から解放される。

第一顔が良くてもね~...ん?

あの顔どっかで見たような。


「あー!あの時誘拐されそうになってたヤツ!」


あの辺な男達に車に押し込まれてなんかムフフされそうだったイケメン君か!

同じ学校の制服着てたけどまったく見覚えないから不思議に思ってたんだよね。

イケメンだったら噂になってサッキーに連れられて見に行ってたはずだし。

転校生だったのか。

あー、すっきりした。

謎が一つ解消された。

今日は良く眠れそうだ。


「あ、このクラスにいたんですか!」


ん?

イケメンの転校生君が女子の肉壁を掻き分けてこちらに寄ってきた。


「さっき見かけたと思ったのでよかった。会えた」


と爽やか笑顔100%の顔で私に向けて言った。

やっぱり格好いいなコイツ。

はっ!殺気!

転校生の後ろを見るとそこには闇があった。

怨念の集合体がクラスの女子達から発生し、今にも具現化して襲ってきそうな勢いだった。怖い。


「えっと、あの、その」

「え?何!?アユアユ転校生と知り合いなの!?」


隣にいたサッキーから追求が来た。


「えっと、その、うん、たまたま」

「私が誘拐されそうになってるところを助けてくれたんですよ」

「へー!へええええ!!!」


凄い笑顔でこっちを見てくるサッキー。

やめて。何思ってるのか大体分かるけどやめて。


「で、ラブなの!?」


言いやがった。言いやがったよサッキー。


「違うって、たまたま助けただけで...」


このままだとサッキーが良からぬことをたくみそうなのとクラスの女子達に殺されかねない。

そう思って必死に弁明をしようとしたところで


「はい、ラブです」


転校生君は爆弾を投下していった。


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