第2話 レッツウォッチング
お父さんに速攻でばれた。
警察にうちの門下生がいたなんて知らなかった。
「この戦いの後は・・・!間違いなく坂崎家の技!」
なんで見ただけで分かるんだよ。
おかげですっごい怒られた。
「あゆむちゃん。自己防衛のために武術は教えたけどあくまで自己防衛のためだからね」
ギュー
「パパ!体が折れる締まる!」
「坂崎家奥義、愛の束縛牢」
「ただのベアーハッグだって!!ごめんなさい!!!」
お母さんもあらあらーといってただそれを眺めていた。止めてください。
おかげで今日学校に来るのに思いっきり時間が掛かった。
くそー、何もかも私からサッキーを取った菊池が悪い!
「もうやだ~、菊池君たら~」
「待ってよ~、ハニーあはは」
「うふふふ」
「あははは」
ハートマークを垂れ流しているバカップルのサッキーと菊池が教室の外の廊下でクイックステップを踊っていた。
邪魔だったので菊池に正拳突きを入れてサッキーの頭を鷲掴みにして教室に入った。
「グハッ!ハニー!待ってよ!!ハニー!!!」
「あー!菊池君!!なんでこんなに世の中は残酷なの!!」
サッキーは頭を鷲掴みにしてるのにどこから声を出してるんだろ。
凄いな愛って。
おのれ菊池。
「今日のアユアユはいつにもましてバイオレンスじゃん。何かあったの?」
「そうだね。歩さん!僕でいいなら相談に乗るよ!でも惚れないでくれ!僕にはハニーだけなんだ!」
とりあえず菊池の顔に回し蹴りを入れてから昨日あったことを話した。
「昨日なんか変な男達がうちの学生を連れ去ろうとして助けてとんずらしたらお父さんにバレた」
「もう、そんな危ないことしてたの?駄目だよアユアユ」
「うん。背中が折れそうだからやめる」
「いや、そうじゃなくて」
サッキーが溜め息を吐いていた。
「あゆむちゃん、本当は凄く可愛いのに男らしさばっかり目立っちゃって、損してるよ」
「いい。もう諦めてるし」
今更可愛くしたってしょうがないし。
「どうせ気になる男子とかいないもん」
「いないんじゃなくて作る気無いんでしょ?そうだ、思い出した!」
サッキーがパッと目を輝かせてこちらを見る。
腕をガシッと掴んで話さない。
凄い、なんて力だ!
こういうときは嫌な予感しかしない。
「隣のクラスに今日転入生が来るんだって。イケメンって噂だよ。イケメン!休み時間見に行こうよ!」
嫌な予感的中しました。
「イヤ。イケメンとかマジ無いでしょ」
「どうしてよー?」
「そんな、ハニー!?僕と言うものがありながら他の男を見に行くのかい!?」
復活した菊池に今度はかかと落としを入れる。
「菊池見たいで嫌な性格してるに決まってるじゃない」
「嫌だもうアユアユ。菊池君は残念なイケメンだからそこら辺の下半身でしかもの考えてない男とは違うって」
あっはっはと笑う私の親友。
良いのか、彼氏がそんな認識で。
本当に良いのか。
「うっし、お前ら席につけー。って菊池また来てたのかお前。さっさと自分の教室に戻れ」
担任の先生がクラスに入ってきて、菊池をゴミのように外に放り投げて授業が始まる。
ここ最近毎日このクラスに来てたから慣れたものだろう。
「ねえ、先生!隣のクラスにイケメンが来たって本当ですか~?」
同じクラスの他の女子生徒が先生に尋ねる。
あ、あの人は!
男を罠にかけ捕食し、ズタボロにすること3年!
どんな男でも食い尽くしてやることで有名なディスポーザーさん!
本名は忘れた。
「なんだ、ディスポーザー。また男漁りか?ほどほどにしろよ」
先生もそうやって呼ぶんですね。
ていうか止めろよ。
止めてやれよ。
転入そうそう引き篭もるぞイケメン転校生。
「そして喜べ女子共よ。確かに隣のクラスの転校生はイケメンだ!」
うぉおおおおお!!!という野太い声が上がる。
少女漫画とかだとキャー!!とかなんだろうけど。
彼氏いない組が多いうちのクラスはたくましくなりすぎてしまった。
サッキーは別。サッキーは可愛い。サッキーは至高。サッキー・マイ・フレンド。
男共は逆に苦悶の声をあげていた。
「ただでさえ碌な女子が残ってないのに!」
「これ以上取られたら俺らどうやって彼女作ればいいんだよ!」
「3次元に目を向けることがなんと愚かなことか。皆のもの、2次元は等しくすべての男性に愛を・・・」
と教室内は凄い状態になっていた。
おい、授業しろよ。
先生が率先して恋愛話とかに興味を持つと碌なことが無い。
自体は収まらず授業も始まらないまま、次の休み時間。
私はダッシュで教室を出ようとしていた。
当然だ。
このままだとサッキーが私を連れて隣のクラスに連れていこうとするのが目に見えてる。
でも、私は甘かった。
高校生活で男がいない女子のパワーを侮っていた。
私より早く教室の出口に集団が出来ていた。
先頭はディスポーザーさん。
早い、早すぎる!
「玉、とったるでー」
「おおおおおおおお!」
そういってモンスターの群れがクラスから出て行った。
転校生に対してさすがに同情したくなってきた。
いかん!こんなことをしている場合ではない!
どちらにしても私も逃げなければ、ヒィイ!サッキーがこっちを見た!
「アユアユー。ワタシタチモイッショニミニイコウヨ」
嫌だ。絶対嫌だぞ私は。
何が何でも逃げきってやる。
教室内を出ようとした瞬間。
「ハニー、迎えに来たよってグハッ!」
調度そこに立っていた菊池にぶつかった。
おのれ菊池!どこまでも私の邪魔をしやがって!
「ナイス!菊池君。じゃアユアユ。行こうか」
「いやー!!!!」
ガシッと胴体を掴まれて肩に丸太を乗せる様に私をかつぐサッキー。
私と親友でいるせいかたくましくなっていた。
でも、可愛い。
そして肩に乗せられた状態で隣のクラスに行く私。
でも、そこは地獄絵図だった。
「桜木君は私達のものよ!」
「皆のものー!天下取りじゃー!」
女同士の髪の引っ張りあいから爪での乱舞。
おおよそ人が出していい声の範疇を超える獣のような雄たけび。
まさに命がけ。
「おお、やってるやってる」
「ねぇ、サッキー」
「何?どうしたの?」
「うちの学校こんなだったっけ?」
「いつもこんなんだよ。あたし菊池君と付き合うことになったとき危なかったし」
「そうだったの!?」
知らなかった。
ていうか菊池もやっぱりイケメンだけあって人気あったんだな。
もしかしてこれ、菊池に彼女が出来た反動もあるんじゃないだろうか?
極上の餌が無くなったと思ったら新たに別のものが導入されたと。
そりゃまた誰かに取られたらたまったもんじゃないからああなるのか。
私の知らない女子の世界がそこにあった。
いや、私も女子だけど。
「う~ん、でもこれだと見えないね」
「いいじゃん、もう帰ろうよサッキー」
これ以上この場にいると危険だよ。
「えー?でもアユアユの姿を見たらイケメン君も一目ぼれしちゃうかもよー!?」
「はは、ナイナイ」
大体私今、担がれてる状態だしどこをどう見て惚れられるんだろう。
そしたら休み時間終了のベルが鳴った。
「あ、ほら戻ろうよ」
「しょうがない。じゃあ次の時間また見に行こうね」
「ええええええ!」
「知らなかったのかい?ハニーからは誰も逃げられない。そうさ!僕の心も!」
いつの間にか隣に現れた菊池に足が使えないので目潰しを食らわしといた。
でも確かに、いい加減チラッとだけでも転校生の顔を見ないと毎日こうなりそうで困る。
「分かったよ...今度こそ顔見るよ」
「それでこそ私の親友!」
戦争を終えたかのような女子達と共に帰路につく。
「あれは...まさか昨日の」
そんな私達を見て何かに気づいた人間がいたことをその時は知らなかった。
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