第7話 「奇石収集」
近くで
『
自分の『嗅覚』には自信があり、あと100ファーストリング(100メートル)も進めば目的の
宿屋のおやじは情報屋や
ルルドはゴルトベルクの街に1週間留まって日々変わっていく情報を収集していた。
天使狩りが行われているのであれば、狩った天使の翼や羽根その他が闇市場で取引されているというたぐいの情報くらいは掴めるはずだった。
複数の方面からの情報が一致すれば、信頼性もぐっと上がるはずなのだが、今回は情報が少なすぎた。
宿屋のおやじからの情報しか入手できなかったのだ。
現状の街近くに天使(自分も含めて)がいるか、
帰還してこないアドストナーズ・ギルドのベテランの
など、ほしい情報は山ほどある。
ごくごくまれに、
が流れてきた時はぞっとする。しかし、それさえも貴重な情報である。
今回、アドストナーズ・ギルドのベテランが帰還してこないので、急遽ルルドが奇石収集の遠征に駆り出された。彼らの家族も心配しているだろうから、消息に関する情報も収集する必要もある。
100ファーストリングは、たとえ森の中であっても素早く動けば10分とかからず到達できる距離だが、ルルドは目的の物の匂いがする地点をぐるっと一周して、今ようやく、真っ直ぐに近づこうとしている。ほとんどすり足状態で移動していくのは、馬鹿らしいとすら感じるのだが、なじみのおやじがわざわざ真顔でぼそとつぶやいた
1歩、また1歩と進むにつれて、背中の
『・・・いる。』自分から30ファーストリングの距離の巨木の根っこ。ちょうど、こちらから狙いにくく、あちらからは狙いやすい所に、そいつは居た。自分と同じように背嚢コートを着込んで、木の根元に入るため専用のような色合いに染めており、フードで顔を隠している。
この距離からでは、人間なのか何なのか識別はできない。身じろぎ一つしないが、ただ眼だけはぎょろりとさせて辺りを窺がっている。内心で舌打ちした。一周に時間を掛けて、この体たらくか。索敵に漏れがあったのかと自分のふがいなさを嘆いた。
蛇に睨まれたのが、どちらであるかはともかく、一旦歩みを止めて、こちらも倒木の陰に身をひそめることにした。日はまだ落ちてなく、西の空を赤く染めており、あとしばらくは、森の中に光を届けてくれる。倒木の陰に隠れて、後ろを取られていないかを確認する。退路を断たれていないこと、つけられていないことを確認した後、『木の根っこ』とあだ名をつけたやつを再び観察することにした。
何かを見ているのか、先ほどとは違い横を向いていた。ルルドはその視線の先に何があるのかを確認するために、顔を動かすことなく、フードの右側に眼だけを動かして視線を移動させて、こちらの動きが見えないように気を使った。フードの右端に這いずってくる何かを捉えて、すぐに理解した。仲間がいるのだ。しかも這いずってくるということは、何かを警戒しているか、何かをまだ待ち受けているかという意味だ。そう、獲物は、
『木の根っこ』と『蛇』と即興であだ名をつけられたとは、思いもよらないだろうが、そいつらの合流を確認して、ルルドは早く日が沈んでくれと祈るような気持ちになっていた。2対1、いやおそらくは複数対1になるだろうことは、容易に想像できた。現状、罠にはまりかけたのは、自分のほうなのだ。奴らが、これから何人に膨れ上がるのか、あだ名が足りるかななどと意味のないことも考えながら、以前の似たような経験のときは、何人に追いかけられたかなどと思い出しつつ、自分が狩られる瞬間を想像して
夜が更けてからの逃避行がいいのか、このまだ日が沈んでいない夕暮れ時の足元が見える状態での逃避行がいいのかを、頭の中で計算し始めていた。
奴ら(もうあだ名で呼んでもしょうがない。さらに複数人いるだろうから)は、この森に精通しているだろう。案外子供のころから遊び場にしていたのではないか?その場合、逃げ切れる確率はどれぐらいなのか?
次の瞬間、ルルドは全速力で駆け出していた。『計算?そんなもんどうでもいい。』
生き物の勘、生存本能を頼りに何も考えず駆け出していた。
後ろで奇声や叫び声が聞こえたが、お構いなしに振り返らずに一心不乱に駆け続けた。そう今回ルルドは『
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます