第10話


 魔法の素質を皆で調べて分かった事だが、ジャスミンちゃんの素質を調べた時が一番クリスタルの輝きが凄かった。


 他の子がシオドリック神父に手伝って貰って素質を調べてみると、クリスタルの輝きが淡く輝くだけだったり台座に刺した時の七色の光がどれも仄暗く長けた属性が無かったりと余り芳しくない。それでも皆キャーキャー騒ぎながら一喜一憂して楽しそうに魔法の素質を調べている。


「ジャスミンちゃん凄かったね~」

「えへへ ありがと~」


 大体皆終わって俺とジミーが最後まで残ってしまった。俺が買った魔法超入門だったのに年下の子に先を越されてしまった。


「じゃあ次は僕がやる!」

「クリスタルをどうぞ」


 先にジミーが調べる事になり、本当に最後になってしまった。


「なんか緊張するな」

「じゃぁジミー君も集中して下さいね」

「はい!」


 シオドリック神父がジミーの肩に手を置き目を瞑り集中する。


「おお! これが魔力ってやつなのか?」

「ジミー君もクリスタルの輝きが少し強いですかね?」


 ジミーもジャスミンちゃんみたいにクリスタルの輝きが強い。兄弟だからかな?ジャスミンちゃんより少し光が弱い様な気がするが、それでも他の子供達より強い光を放っている。


「それではゆっくり台座に刺して下さい」

「・・・青色と緑色が強く光ってますか?」

「青は水で緑が自然ですか ジミー君はジャスミンちゃんとは逆の属性に長けていますね」


 この魔法超入門の魔法属性表だと、赤が炎属性の魔法・橙が強化等の魔法・黄が雷属性の魔法・緑が自然に関する魔法・青が水属性の魔法・藍が補助に関する魔法・紫が幻影属性の魔法と書いてある。


 子供達皆で素質の見極めをやっていて気が付いたんだが、素質の色がまったく光らないって事が無い。皆光の強弱はあるが全く素質の無い者は居なかった。


 ジャスミンちゃんの素質の見極めは見てて凄そうだってのは分かったが、一体どの位の素質があれば魔法大学で学べる資格があるのだろうか?やっぱり12歳になって試験を受けてみない事には分からないのだろうか。この村で誰か経験者が居れば話を聞いてみたいのだが…。


「最後になってしまって申し訳ないですね 折角ニコールが買った魔法の入門書でしたのに」

「大丈夫ですよ シオ神父」

「では最後になりますがニコールの素質を見てみましょうか」

「はい! 最後だと妙に緊張しますね」


 クリスタルの柄を持ち、集中していく。シオドリック神父が後ろに回り静かに肩に手を置いてくる。


「じゃぁ行きますよ 集中して下さいね」


 クリスタルの先端を見つめ集中していると、背中からじんわりと温かさが広がってくる。俺は前世で体験した事の無い感覚に驚いていた。


 体の中を流れるこの力を今まで何故感じる事が出来なかったのかと驚愕した。もしかしてシオドリック神父が補助してくれてるからかと思ったが、もう神父の手は俺の肩から離れていた。


 まるでもう一つ俺の体に重なる体が有るみたいな、体の中にあるもう一つの体に接続出来たみたいな不思議な感覚だ。ジャスミンちゃんや他の子供達が興奮する訳だ。


「ニコのクリスタルの光ちっさいな!」

「小さいけど凄い光ってるよ~」


 体を流れる新たな感覚に驚いていると、ジミーとジャスミンちゃんが俺の光らせているクリスタルに感想を言っている。確かにジャスミンちゃんみたいにクリスタル全体が輝いている訳では無い、先端のちょっとしか光っていない。


 豆電球とか蛍の光みたいな感じでクリスタルが光ってるが、これは大丈夫なんだろうか?光り方はジャスミンちゃん並みに光っているが…。


 集中が切れない内に台座に刺し込む。


「こ、これは・・・」

「ニコ まじかよ」


 光るクリスタルを台座に刺して、どの色が光ってるか確認する。しかし、そこにはとても残念な事実が待っていた。


「そんな・・・」

「お、落ち込む事は無いですよ ニコール」


 シオドリック神父が慌てた感じでフォローしてくれる。台座に映し出される七色の光がどれも仄暗い色しか現れていなかった。知りたかった事実だけど、知りたくない事実でもあった…。


 少し呆然としているとジャスミンちゃんが騒ぎ出す。


「ニコお兄ちゃんの七色じゃない!八色だよ!」


 余りに暗い光の発色で気付かなかったが、良く見ると台座に浮かび上がっていたのは確かに八色だった。八色目の属性は何なんだろうか?


「確かに八色ですね なんでしょう?赤紫ですかね?」


 シオドリック神父が魔法の入門書をパラパラと捲り、うーんと唸りながら小首を傾げている。


「良く分からないですね もっと入門書をしっかり読めば分かるかもしれませんが・・・」

「そっか~ニコは色々器用だから魔法も凄いのかと思ったぜ」

「そんな事無いけど・・・」


 俺は魔法に余り才能が無いかもしれない。クリスタルの輝きも小さかったし、属性の適正もなさそうだしで少しがっかりしていた。


 しかし、魔法大学に行く夢を諦めた訳では無い。この後、魔法超入門をしっかり読んで何か糸口が見つからないか調べるつもりだ。

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