第5話
父は村で警備と狩猟を行っている。若い村人を纏め警備団を組織し、村周辺の警備と狩猟の指揮を執っている。若い連中の稽古もやっていて、俺も父に訓練して貰っている。と言ってもお遊びみたいな物だが。
こんな開拓村だ、村人の人数なんて高が知れている。警備団は色々な職と兼業で行っている。森の開拓があれば村の若い連中総出で森を開きに行くし、収穫の時期になれば子供も含めて皆で収穫する。
「おはよう御座います シオ神父」
シオドリック・リーリー神父は教会が派遣する司祭だ。丸眼鏡に髭を綺麗に整え黒い司祭服、温和な顔で俺を迎えてくれる。
「おはよう ニコ デナードさんの手伝いは終わったのかい?」
「ちゃんと手伝ったよ キャロお姉ちゃんおはよう」
「ニコおはよう キャロリーナとちゃんと呼びなさい」
キャロリーナ・カールソン修道女も教会から派遣された人でベリー系の赤に近い茶色の髪に教会の頭巾を被った意志の強そうな女性がシオドリック神父と一緒に迎えてくれる。
「お姉ちゃんだって僕の事ニコって呼んでるよ?」
「あたしはお姉ちゃんだから良いのよ 目上の人にはちゃんと名前を呼びなさい」
そう言ってキャロお姉ちゃんが頭を撫でてくれる。
俺は前世でも名前を覚えるのは苦手だった。前世であれなのに馴染みの無いこの異世界で顔と名前が一致しない事しない事。ついつい呼びやすいように呼んでしまう。
教会で数人の子供達に勉強を教えている。と言っても簡単な読み書きと歴史の勉強で半ば保育所と化している。
この二人が俺のオシメを替え、ミルクを飲ませてくれた人だ。
教会は日々の祈りを捧げる場所であり、冠婚葬祭を取り仕切り、傷の手当てをしてくれる場所だ。
こんな田舎にある開拓村だ娯楽なんて少ないし、まして子供がやることと言ったら家の手伝いをするか、畑仕事するか教会で読み書きするか、警備団の真似事位しか無い。
俺はデナードさんの農場を朝手伝い昼まで教会で勉強して、午後から自警団で簡単な訓練をしてその後は遊ぶか本を読んで夕ご飯まで時間を潰す。
父が朝から山に入る時は狩猟の手伝いと称した山菜取りに一緒に出掛け、昼までに戻り午後から教会で読み書き夕方に畑を手伝って夕食を摂って夜はすぐに寝る生活をしている。
健康的すぎる…俺にとって唯一の娯楽と言って良いのは人類の救世主と呼ばれる5人の英雄の話をまとめた本を読むくらいだ。
ファラムンド族の英雄が強力な武具を作り出し、ジュディット族の英雄が強力な武具を魔道具に仕立て上げ、人族・アルトゥル族・カウエル族がこれをもって魔物を退ける。
人族の英雄が一瞬にして魔物を遮る壁を作り上げ一夜にして砦を作り上げる。アルトゥル族の英雄が魔法をもって、カウエル族の英雄が鍛え上げられた肉体をもって人類を先導して魔物に打ち勝つ…大体そんな感じの英雄譚だ。
魔道具が何なのか分からないが、魔法には興味がある。
「ニコお兄ちゃんこれ読んで~」
1つ年下のジャスミン・マクレガンが絵本を持って話しかけてくる。
「ジャスミン駄目よ ニコは勉強があるから私が読んであげるわよ」
「え~ ニコお兄ちゃんが良い~」
キャロお姉ちゃんにイヤイヤしながら本を奪われないように体で隠すジャスミンちゃん。
「私じゃ駄目だって言うのはこの口かー!」
「いやー! キャー!」
背中を向けていたが脇腹を擽られながら抱えられてしまった。キャーキャー言いながらジャスミンちゃんはキャロお姉ちゃんに連れていかれてしまう。
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