第3話
次に俺が目を覚ましたのはベッドの上だった。
当たり前だ。俺はぼんやりする視界と意識の中、空腹と上手く体を動かせない事に気が付いた。喉の渇きと空腹は良いとして、体が上手く動かせない事に嫌な焦りを覚えた。
急激に大学での事を思い出し、嫌な汗が噴き出す。もしかしてあの髭男に襲われた時に負った傷が原因で半身不随にでもなったんじゃ…。
手足に力を入れてどこか動かない所、痛む所は無いかと確認してみる。特に痛む所は無い。手の指先は動くし、足の指だって問題無いように感じる。
「あぅー」
余りの安堵に変な声が出てしまった。何処も痛む所は無いし、力が入らないわけでもない。しかし、上手く体を起こす事が出来ないのだ。
誰か居ないかと周りを見回すが良く見えない。
(俺の眼鏡何処だよ・・・)
そう思って身じろぎしていたら俺は盛大にやらかしてしまった。
嘘だろ…何て事だ。
…漏らしてしまったのだ。小ならまだしも--小も駄目だが--、あろう事か大の方を漏らしてしまった。特に意識していなかったが急な便意に我慢が全く出来なかったのだ。
俺はもう成人式も終えているし、この歳で大を漏らすのはNG。しかも、こんな病院のベッドの上で漏らしてしまうとは…。
「おぎゃぁぁぁああ!!」
俺は余りの不快感に感情を抑えられず、泣き喚きだしてしまった。自分の体が上手く動かず、まったく我慢出来ずにお漏らししてしまった事。怪我人の俺の傍に看護師が居ない事に腹が立って仕方がなかった。
兎に角誰かに何とかして欲しくて俺は力の限り泣いて、力の限り力んでしまった。
(誰か居ないのかよ! 俺の体はどうなっちゃったんだよ!)
力む余り更に大と小を漏らしてしまうが、もはや不快感で感情をコントロール出来ずにひたすら泣く事しか出来なかった。
「ぎゃぁああああ、うぎゃぁぁあ!!」
「ガシャン!」「カシャン!」
物が割れる音と不快な甲高い泣き声。何が何やら分からず、混乱を極めていたが何処かからバタバタと足音が聞こえてくる。
「#$%&%&! #$%&#$!」
ベッドの横によく解らない事を喋りながら信じられないくらいデカい男が現れた。
丸眼鏡を掛けた髭を整えた黒服の男がベッドの横に現れたのだ。俺の目には3倍から5倍はあるんじゃないかと思える男が立っていた。
ようやく人が来たと思った安心感と医者と思われるこの男のあまりのデカさに驚いて泣き喚くのを忘れていた。
「#%$#%&? %$$#%?」
「#$%&#! #$%##$%?」
更に看護師と思われる女性も現れ徐に俺の服を脱がしていく。俺は唐突に脱がされ焦って止めさせようと思ったが、黒い服に黒いナースキャップ?見た事ないエンブレムのネックレスを付けた3倍から5倍はある看護師に抑えられ抵抗空しく脱がされてしまった。
「あぅー!」
俺は恥ずかしさと混乱でなすがままになっていた。すいませんと言おうと思ったのだが「あぅー」としか言えない自分に驚いていた。
テキパキと女性がパンツを取り換えてくれる。「あうあう」と騒ぐ俺を抱き上げてくる。顔の近さと言うかデカさに驚いていると隣の男に渡されてしまう。
「%$##$# #$$%&!」
何か言うが早いかまた奥に行ってしまった。俺は手を突き出して自分の手を確認してみた。ぶくぶくと膨れた手が見える。
「%$#&%?」
黒服の男が何か言って俺の突き出した手を掴んでくる。このおっさんの手がデカすぎる。これはあれか?と考えていたが驚きと混乱で疲れた俺は起きた時に感じた空腹を思い出し、また感情のコントロールが出来なくなり泣き出してしまう。
「おぎゃぁぁぁああ!」
「#%$%$#~」
奥に行っていた女性が哺乳瓶を持って戻ってきた。女性に抱きかかえ直してもらって逆さにした哺乳瓶を咥えさせられる。これを待っていたという感じで自分でも哺乳瓶を持って「んぐんぐ」と飲んでいく。
体が欲求に従ってミルクを飲むのをやめられない。全部飲み干すと背中をとんとんされゲップを促される。
ミルクを飲んだ満腹感からか泣き疲れた疲労感からか…俺は睡魔に抗う事が出来ずにまた眠りに落ちた。
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