第4話





「―――もう、いい?」



擦れた声や歪んだ顔を眺めながら

頭の端でどうして聞くのだろうと微かに思った。




聞いたところで唇を塞いで何も言わせないのは、あなたのほうなのに




押し寄せる感覚が途絶える瞬間、

大きく吐かれた息が私の前髪を揺らした。



湿気を帯びた息が耳元で繰り返される。



汗ばんだ肌と速い鼓動を感じながら、

私の瞳にさっきのうっ血した嘘の痕が瞳に映った。




私はその痕に唇を寄せると、そっと舌先でなぞる。



あなたに別の世界があることを、

私は知っているの



だからもう、これで終わりにしたい



なのに――――






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熱帯夜 @rie0928

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