第3話





…違う、


そうじゃない そうじゃないの


本当は私の気持ちをわかっているんじゃないの?



「…愛してるよ」



耳朶の中に響く低く湿った声が私の身体を震わせる。



本当、ひどい人だ。



なにもしらないふりをして私を愛せるなんて

そんな嘘は聞きたくないのに。




指も唇も、声も汚れているのに、

その全てが私をここに留まらせてしまう。



「……愛してるよ、千尋」



“終わろう”って言っているのに、どうしてわかってくれないの


なんならそれらしく、泣けばいい?




零した雫は汚れた指に掬われて、

欲しかった言葉の代わりに届いたのは苦しいほどの熱だった。



「……可愛い、もっとないて」



そんな言葉と共に、また一層お互いの体が揺れていく。









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