春の朝

 ある日のことです。金魚のさらさちゃんは、体を垂直にして、砂利掃除をしていました。

その姿は、真剣そのものです。


「おはよう、さらさちゃん」

「おはよう」

「疲れない?そんなに一生懸命につっついて」

「いい運動だよ」


さらさちゃんは、軽く肩?(金魚に肩があるとすれば)をすくめました。さっきから、もう1時間も玉砂利をつっついているのです。疲れないのかな、いつまでやるのかな・・・?人間のみーちゃんは、その様子を、はなれたところから、観察することにしました。誰も見ていなければ、さらさちゃんは、きっと休むはず。

 ところが、さすがのさらさちゃん。誰が見ていようと、見ていなかろうと、休むことなくマイペースに行動しています。今度は、水中に浮かんでは、スイーと泳ぎ、また底面へ降りる。この動作をずっと繰り返していました。 

 みーちゃんは、辛抱強く見てから、またさらさちゃんのもとへ行きました。すると、さらさちゃんのほうから声をかけてきたのです。


「ねえ、みーちゃん、見て」


さらさちゃんは、底面ぎりぎりのところを、端から端まで、スイースイーとまっすぐ泳ぎました。


「見た?」

「うん、見たよ。今の泳ぎ方は、床をすべっているみたいだったネ」


さらさちゃんは、得意そうにまた、おんなじ泳ぎをしました。


「スケート選手みたいでしょ?」


みーちゃんは、それを聞いて、さらさちゃんは、どこでそんなことを覚えたのだろうと、不思議に思いました。

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