みーちゃん、小千谷の錦鯉を語る
「さらさちゃん、今日ね、小千谷の錦鯉を見て来たよ」
金魚のさらさちゃんは、みーちゃんが帰って来たので、水槽の手前のほうへ寄りました。
「お帰り!みーちゃん。にしきごい・・・?みーちゃんは、恋多きオンナだネ」
さらさちゃんは、ひょっとこみたいに、おどけました。
「そうじゃないのよ~その恋じゃなくってね、お魚の鯉!
錦鯉ねぇ、きれいだったよ、大きかったよ~。それでね、目は小さかった。といったって、さらさちゃんよりも大きい目だったけど、体の比率からいったら、小さな目だったっていうか・・・。それでね、錦鯉はね、何十年も生きるんだって。あたし、すっかり魅入られちゃった」
みーちゃんは、マグカップにココアを入れ、ポットのお湯を注ぎました。
「それでね、えさをあげたの。そのえさはね、こ~んなに大きいの。アイスのコーンの中にたっぷりと入っていて・・・それをね、そのコーンごとあげていいですよってことだったの。錦鯉達、ぱかっと大きな口で、みるみる吸いこんでいったのよ」
さらさちゃんは、みーちゃんが話すのを聞いて、そのアイスのコーンの中に入っていた大きなえさというのに、大変興味を持ちました。
「ねぇ、みーちゃん、にしきごいのえさは、金魚のと違うの?」
「大きさが全然ね。あ、ねえそうだわ、ちょっと待っててね」
みーちゃんが、かばんから小さな紙袋を探ると、たった一粒だけ、錦鯉のえさが残っていました。
「!」
さらさちゃんは、そのえさを見ると、水面から半分以上も顔を出し、いつもの倍速で口をぱくぱくさせました。
「あらあら!さらさちゃん、無理よ~。あはは!こんな大きなの、あげられないわ。小さく砕いてからにしなくっちゃね」
さらさちゃんは、あきらめません。ぴょんぴょん飛び上がって、えさをそのままの大きさでちょうだいと、催促するのでした。
みーちゃんは、言いました。
「さらさちゃん、それじゃあ、でめちゃんを呼んできてくれる?」
「ン?」
さらさちゃんは、聞こえないふりです。大きなえさを、全部一匹で、食べようというのでしょうか。
「わかったわ。はい、さらさちゃん」
みーちゃんは、根負けして、水面に、錦鯉のえさを浮かべるのでした。
さらさちゃんは、大喜びでえさに飛びつきました。
ところが、えさは、硬くて大きすぎ、ちっとも、さらさちゃんの口の中に入りません。
しばらく頑張っていたさらさちゃんでしたが、とうとう諦めて、みーちゃんに言いました。
「イイ夢見せてもらったゼ…」
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