第4話

 学院から少し離れた14階建てのマンションの一室で一人の少女が自責の念に押しつぶされそうになっていた。

 その少女とはもちろん、如月雪葉その人である。


「あー、どうしよう……」


 お風呂から上がった後、お気に入りのフリフリパジャマに着替え終わった私はリビングのソファーにうつ伏せに寝転がったまま、チラッとクッションの隙間からテレビの方へと視線を向けた。

 そこには、『ドラゴンを討伐。謎の魔法少女現る』の文字がデカデカと表示されていて、思わず溜息を零した。


 結局あの後、ドラゴンが炎を吐く瞬間を狙って、口内に無数の魔力玉を放って倒す事が出来たのだが――――――

 “結界”と呼ばれる異空間で戦っていたため、それを知らずにあの例の本にさっさと出すよう命じたら、案の定、ドラゴン討伐に駆け付けた騎士やら市民の避難誘導を行っていた警察などの人達に姿を見られてしまった。


 しかも、夕方のニュースには“この少女に関する確かな情報を提供した者には1億の懸賞金を”と国王自らが発言したため、今現在も街中やネットは大騒ぎ。

 

 明日、学院に行ったらこの話題で持ち切りになるだろう。


 だが、問題はそこではなく―――――あの時の私の姿がテレビに映っている事だ。

 これでは、私があの時の少女です。

 と、皆に教えているようなもの。

 加えて、このニュースは何処のテレビ局でリアルタイムで今も流され続けている。

 

 つまり、このニュースを見ればいつか誰かが私の事を王宮や警察に知らせる可能性が高い。

 否、確実に告げるだろう。

 懸賞金額が金額なだけに―――――

 

 そう考えただけでも憂鬱ゆううつなのに、明日どんな顔して学院に行けば良いの!?


「そんな事考えなくても大丈夫ですよ!!??」


「!?」


 聞き覚えのある声に思わず私は起き上がると、目の前にあの本が宙に浮かんでいて―――――


「改めまして自己紹介をば……。わたくしは“リザベルの書”。

 こう見えて、伝説上の魔導書の一冊でございます。

 どうぞ、お見知りおきを……♪」

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